short story
□どうしてこんなことに…?
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「あ――――――――――――――――――ッッ!!!」
「わ――――――――――――――――――ッッ!!!」
茶髪の少女と黒髪の少年が同時に飛び起きた。同じ顔をした二人が一斉に顔を見合わせ、お互い真っ青になる。
ちなみに今日は8月15日。さらに今の時間は8時10分と来たものだ。
完璧に遅刻だ。もう2人は諦めてしまったようで、ゆったりとリビングに降りていく。
「あー…もう行くのめんどくさいから今日はサボっちゃおうか」
「姉ちゃんの案に賛成ー」
「それじゃ、ちょっと公園行こう! 公園!!」
「なんでいきなり公園?」
「こーゆー日はやっぱり公園っしょ!」
少女の考えることは奇想天外なものが多い。しかも学校をサボるのは大抵寝坊した時、しかも少年の方までもが必ず寝坊する。…いつもそういう流れだ。
どうやったら2人同時に寝坊できるのだろうか。しかも起きる時間帯も大抵は同じ。
「…流石、と言ってもいいかもしれないな〜」
「何が?」
「だって寝坊するときも一緒なんだよ!? 起きる時間ならともかく…」
「…うーん…。まぁ双子だからなんじゃね?」
そう、少年と少女は双子なのだ。だから同じ顔をしている。
少年の方はまだ眠たそうにうつらうつらしていた。一方の少女は早速朝ごはんを作っている。
「姉ちゃん、今日の朝ごはんは?」
「うーんとね、ブリオッシュ!!」
「冗談もほどほどにしなされ」
「…ハイ」
「で? 本当は何なの?」
「トーストと、スクランブルエッグ! 牛乳は必須でしょ!」
「姉ちゃん、背、ちっちゃいもんな」
「それは言うなぁ――――――――――――――――ッッ!!」
顔を真っ赤にしながらフライ返しを少年の方に向けた。
間一髪少年は避ける。…が、避けた瞬間椅子から落ちた。これには少女も驚く。
よく見ると椅子の背もたれが後ろではなく横にあったのだ。…方向のせいで落ちたと見える。
「姉ちゃんのせいだからな」
「何でそうなるの!?」
「っつーか、公園行くんだろ?」
そして2人は物凄い勢いで朝食を平らげた。少女は素早く食器を洗い、私服に着替える。
少年もまた私服に着替え、2人はスニーカーを履いて公園へと向かった。
公園に着く頃にはもう9時を過ぎていた。2人でブランコに乗りながら雑談に花を咲かせる。
すると、少女が何かを見つけたようだ。一旦ブランコから降りて道路の方へと歩き出す。
連れて戻ってきたのは黒猫だった。
そしていつの間にか時計は12時を過ぎていた。もう12時30分近くなっている。
少女は黒猫を撫でながら話を続ける。…すると話が急に変わった。
「ウチ、夏って好きじゃないんだ」
「え?」
「何か嫌なの」
すると黒猫がするりと逃げ出して行ってしまった。少女は急いで立ち上がり、黒猫を追いかける。
黒猫は道路の方に出て行ってしまったため、少女も道路へと飛び出した。
…信号が赤になったことにも気付かずに。
いち早くそれに気づいた少年は必死の形相で叫びながら少女の方へと駆けていく。
「姉ちゃんッッ!!!」
「え?」
そして我に返った少女の瞳に入ってきたもの―――――――――それは、トラック。
トラックが少女めがけて突っ込んでくる…!
避けきれない…!!
「きゃ…」
少女に悲鳴を上げさせる暇も与えず、トラックは少女をはねた。
血飛沫が少年の顔に数滴飛び散る。…少年はもう何も言えなかった。
目の前で、双子の片割れが死んでしまったなんて、信じたくもなかった――――――――――――…。
『ああ、神様。どうかこれは夢だと言ってください――――――――――』
+END+