short story
□一人ぼっちは、嫌…
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少女の泣き叫ぶ声が響き渡った。…何かを探し求めるかのように扉を叩く。
…開ければいいのだろうが、と思うかもしれない。でも開かないのだ。
外から鍵を閉められてしまっているから。
「…どうして…? どうして…ッ!?」
「仕方がないんだ、姉ちゃん」
「嫌だ、嫌だよ…!」
「…もう、この村は終わりだ。…姉ちゃんだけでもどうか生き延びて…」
少女はドアを何回も叩く。殴りつける。…でも頑丈な扉はそんな事ではビクともしなくて。
涙をもう隠しはしない。ボロボロと零れる。…こぼれた涙が石造りの床を黒く染めた。
「…何で…ウチなんかのために翔が犠牲にならなきゃなんないの…?」
「…姉ちゃんは生きなきゃならない。…そうだろ…?」
「ウチなんかより…ウチなんかより翔のほうが生きなきゃダメだよ…!」
絞り出すような声で少女は翔に言った。
「でもさ、姉ちゃん。今はもう退学になってしまったけれど、姉ちゃんには姉ちゃんが待たなければならない“仲間”が居るだろ…?」
その言葉に少女は一瞬ビクッと震えた。
…あの人たちを思い出してしまったようだ。少女が待たなければならない3人の姿が瞼の裏に思い浮かんでくる。
「あの3人…。俺は会ったことないけど、姉ちゃんにとっては大切なんだろ?」
「…そ、それは…」
「姉ちゃんが…。たとえ姉ちゃんがよくたってその3人はどうなる?」
「…っ」
「気づいた? 姉ちゃん、姉ちゃんが言っていることはただの自己満足にしかならない」
翔の声が冷たい。…刺のように少女の心に突き刺さっているだろう。
でも言っていることは的を得ている。
「…俺には失うものも、失って悲しんでくれるような人物もいない。
…でもな、姉ちゃんには居るだろ…?」
少女がハッとしたように顔を上げた。
少年は扉の向こう側でクスリと笑う。…ようやく気付いてもらえて嬉しかったのだろう。
「…な? 姉ちゃんは生きなきゃダメだ」
「でも…それなら翔だって一緒に…!」
「それはダメだ。…あいつらは姉ちゃんを殺そうとしてる。
…俺が、代わりになるから」
「…っダメぇ!!」
思わず少女は叫ぶ。…翔はただ悲しそうに笑った。
少女はもうめちゃくちゃになっている。ドアを限られるだけ、殴りつける。
そのうち血が滴り落ちてきてしまった。
「姉ちゃん。…もう大丈夫だ。
…姉ちゃんは………蜜柑は、俺が守るから―――――――――――」
その時、扉が乱暴に開かれる音がした。
翔がそちらへと歩いていくのが分かる。…蜜柑は必死に止めた。
…翔は最期に、「また、な」とつぶやいて去っていった。
それが、蜜柑が聞いた最期の翔の言葉だった。
20XX年XX月XX日、午後2時。
翔の命の灯火は、そこで消えた。
『ありがとうな、姉ちゃん。…またいつか―――――――――――――』
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