short story
□両想いへの第一歩
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「先輩! 佐倉先輩っ!!」
「ふぇぇ!? え、な、何? って蒼? どうしたの?」
「佐倉先輩って好きな人いるんですか?」
試しに聞いてみた、その質問。佐倉先輩は誰に対しても同じ態度だし、好きな人なんていないのかと思っていた。
…今日、この日までは。
「な、ななななな!!?」
それを言っただけなのに、佐倉先輩の顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
…この時、初めて思い知った。佐倉先輩には好きな人がいるんだな、と。
「…ふーん、居るんだぁ…」
「な、何その目はっ!! 蒼、さっきからどうしたの?」
「や、先輩にも好きな人がいるんだなーって」
「どう言う意味よ、それ」
佐倉先輩の顔が引きつっている。怒りマークが見えるような気がするが、今は放っておこう。
さっきから視線が痛い。…振り返ると、先輩後輩関係なく俺らの方を見ている観衆があった。
「あれ、蒼くん? はわわっ、佐倉先輩じゃないですか!!」
興奮気味に駆け寄ってくるのは、同じ時期にアリス学園に転校してきた薺だった。彼女とは腐れ縁である。
ちなみに彼女はレズ推進。…というのは周りの噂である。本当かどうか、確かめに行った奴が帰ってきたことはなかったらしい。
「蜜柑先輩、でいいですよねっ!!」
「あ、うん」
「蜜柑先輩が好きなのって、もしかして日向棗先輩だったりします?」