short story

□桜吹雪の舞い散る季節に
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+桜吹雪の舞い散る季節に





 ―――――ずっと、ずっと見ていたんだ。


 桜吹雪が視界をくらませ、一面が淡いピンク色に染まっていく。
 その桜の木の上に腰掛けている少年は、手のひらに桜の花びらをふわりと乗せて、また落とす…そんな作業を繰り返していた。
 ひらひらと花びらは地面に向かって舞い落ちる。


「わぁ…っ!! 今日も桜吹雪が綺麗やなぁ…」


 裏口からひょっこり現れた少女は風に吹かれて舞い上がる桜の花びらたちを見上げ、微笑んだ。
 空に舞い上がる花びらたちは、風が止むとひらひらと地に落ちる。少女は竹箒を出し、玄関に舞い落ちた桜の花びらを掃き始めた。
 強く吹き付けた風がまたもや桜の花びらを天へと舞い上げる。少女は『やれやれ』と少々困り気味に掃き掃除を続けた。


「…面倒くさがったりしないんだな」
「あ…棗様? そこで何してるんです?」
「花見」


 棗、と呼ばれた少年はそっけない返事を返すと空を見上げた。桜吹雪が青空にとても映える。
 そのうち、空を花びらが染め上げてしまうのではないかと思うくらい花びらはたくさん散って、舞っていく―――――。


「いいですね、お花見。私も蒼としたかったです―――――」


 ―――――ほら、また。君は別の誰かを見てるんだ。


 ―――――ただ、俺だけを見ていて欲しい。そう思うのは俺の我侭なのだろうか。


「…蒼って誰だよ」
「大切な幼馴染です」


 ニコリと笑ってそう告げた少女の髪を優しく風がなびかせた。
 包み込むように、優しい風は少女に向かって吹く。しかし、強くなくて弱すぎでもないちょうどいい強さで。


「棗様は、誰とお花見したいですか?」




























 ―――――俺が一緒に桜を見たいと思ったのは、







































 ―――――生涯で唯一、





























 ―――――……。





























+END+

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