short story

□気付かない想い、触れたくても触れられない
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「…はぁ…」




 一人の少女がいつもの光景を見てため息をつく。校門のところには女生徒がたくさん集まっていた。
 大体の予想はついている。このままいなくなるのを待っていても遅刻するだけだ。いつもの通り校門の横に立っている柵を乗り越えることにし、少女は軽く2、3歩後ずさった。そして思いっきり駆け出して軽く地面を蹴る。軽々とその柵の上に飛び乗った。
 ちらりと横を見やると、案の定あの女ったらしがそこにいるのが見えた。毎朝毎朝困るなーなんてことを思いつつ、少女はそこから飛び降りようとする。しかし次の瞬間少女の体は宙に浮いていた。―――否、横に引っ張られたというべきか。




「…ツイてない…っ!!」
「ったくテメェは…。毎朝毎朝そっから行ってるとその内足くじくぞ」
「誰のせいだ誰の!! 別にくじいたって構わんわ!! 逆にこの中いいる方が嫌なんだよっ!!!」
『えー…佐倉さん、それは有り得ないと思うわ』
『私も私もー。棗くんを好きにならないなんて、あなた本当に女子?』
「生物学上ではな。つか離せ!!」
「……………………………」




 少女―佐倉蜜柑―は掴まれていた手を振りほどこうとした。しかし男の力に女子が敵うわけがない。
 蜜柑はどうしてコイツはこんな残念な人間に育ってしまったのだろう…と考えていた。ちなみに蜜柑と棗は昔からの幼馴染である。
 しかし中学校だけは別々で、中学校に進学した途端、ぱったりと会わなくなってしまった。そして高校に先週入学してみれば、あの幼馴染がいるではないか。懐かしいな、と思いつつ話しかけないでいた。
 そしてその後、今日まで一緒のクラスとして生活してきてようやく気付いたのだ。―――幼馴染はかなりの女好きに成長していると。
 小学校まではただのツンデレだったはずの幼馴染・日向棗。どんなことがあったらこんな残念な人物になってしまうのだろうか。




「てかチャイム鳴るしっ!! 今日私、朝用事があるから行かなきゃなんないんだって!!」
「…用事って何だよ」
「…転校生案内…」
「副委員長に任せときゃいいだろ」
「良くないっ!! それに蒼は私が案内したほうがいいって先生が…」
「…何でそうなった? つか蒼って誰だよ」
「……まぁ中学校の頃仲が良かったからかな……。蒼は中学校の頃の同級生で…じゃなくて!! 何でこんな話しなきゃなんないの!?」




 蜜柑がそう言うと、棗は『別に』と呟いた。そしていつの間にか力が緩まっていた手を振り払うと、蜜柑はそのまま駆け出していく。
 周りの女子は『何あの子ー』などと不服そうにしているが、棗はその言葉に反応を見せない。
 ただ、今振り払われた手を見ているだけだった。




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続き…用意してあるけど載せようか迷ってm(ぇ
どうしようかなー…。

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