short story

□夏から始まる物語
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「棗と葵…ここに居るんだっけ」




 一人の少女が大きな門の前に立っている。少女の目の前には国立アリス学園。天賦の才能―――アリスを持つ者しか入ることの許されない特別な学園だ。そんな学園に彼女は一体何の用なのだろうか。道行く人々が少女の容姿に見惚れ、何度もチラチラと少女の方を見ている。




 しかし少女はそんなことに気づかず、目の前にある大きな門を見上げているだけだった。




 そして少し門を見上げていたが、ようやく動いた彼女が門番に声をかけた。すると、彼女が来ることは前からわかっていたかのように門番はすぐ門を開けてくれた。少女は満足げに笑うとアリス学園へ足を踏み入れた。




「全く…。酷いんだから二人とも。私に黙ってアリス学園に行くなんて…っ!!」
「まぁまぁ気にしないが勝ちだと思うけど」
「お前は気にしなくていいわ!! つかなんであんたココに居るの!!?」
「私、白羽紅葉!! 白羽花楓の妹である私はどんなことがあっても蜜柑ちゃんを利用することは忘れないもの☆」
「やっぱり花楓の差金か!! あとでブッ潰す…っ!! つか利用ってなんだよ!!」
「それは蛍ちゃんに聞いて頂戴☆ てか翔とか蒼とかはどうしたの?」




 その問いかけに蜜柑と呼ばれた少女は答えなかった。白羽紅葉と名乗った少女はある意味嫌な予感しかさせない雰囲気を漂わせながら蜜柑の後を追ってきていた。流石に嫌な予感しかしないので、蜜柑はもういっそこいつを部屋に放り込んでおこうかと考えている。そうすればパソコンだけに集中し、絶対に追っかけて来るなんてことにはならない。





 ちなみに紅葉もボカ○オタクである。お気に入りの曲はありすぎて挙げきれないらしい。というか、さっきの紅葉の言葉が気になる。
 『白羽花楓の妹である私はどんなことがあっても蜜柑ちゃんを利用することは忘れないもの☆』…利用…利用って一体何をするつもりなのだろうか…。更に気になったのは『蛍ちゃんに聞いて頂戴☆』という続けられた言葉。これだけを聞いても嫌な予感しかしない…。 




「蜜柑ちゃん、休日はカラオケ行こうね☆」
「行かないよ!! また歌わせる気か!!!」
「あったりまえ☆」
「当たり前にすんな!! こっちは迷惑なんだっつの!!!」




 本当に迷惑そうに怒る蜜柑。しかしそんなのを気にするわけがない花楓妹・紅葉。やっぱり遺伝なのだろうか、性格まで似てしまっている。喋り方までは似てなくとも、バカな雰囲気・オタクな雰囲気・ボカロラブな雰囲気はやっぱり花楓と同じだ。やっぱり姉妹だなぁ…と改めて実感させられる。全く、遺伝子は一体どうなっているのだろう。親の顔を見てみたいものだ。まぁ見たことはあるのだが。











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