short story
□こんな未来を夢見ていたんだ
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―――
「………父さん。いい加減起きろ、7時だぞ」
「ぅ…あと五分だけ待ってくれ……」
「可愛い愛娘が朝ごはん作って待ってますけど」
その言葉をかけられた瞬間、少年の父親―――――行平泉水は速攻で飛び起きた。
彼が溺愛する愛娘が料理を作っていると聞いた瞬間、それはもうどんなに動体視力が良くてもいつ移動したかわからないくらいに素早く彼は動くのだ。
階段を駆け下りる音が聞こえ、それとともに父親の嘆きの叫びが自分の耳に飛び込んでくる。
「あ、翔!! …ってまだ制服に着替えてなかったんやね」
「はよ、蜜柑。…父さんさぁ、いい加減離れたら? そろそろ子離れの時期だと俺は思う」
すると、頭に強い衝撃が走った。いてて、と頭を抑える。顔を上げると、泉水が鬼の形相で翔を見下ろしていた。
そしてその後、長々と説教を続けるものだから、翔はそれに聞き飽きて、適当にあしらい、朝食を食べるために席についた。
それを見ても説教を続けている姿に、キッチンにいた蜜柑と母親である柚香は顔を見合わせ、苦笑する。
「さ、お父さんも翔も席について! 早くしないとバスに間に合わへんよ?」
―――――彼女の鶴の一声で、行平家の朝は―――――………始まった。
*end...