short story

□雪が舞い散る悲しみの朝
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 雪が、ちらついている。
 少女は一人、それを見上げていた。
 頬に伝うのは、一筋の―――――……。


◇◇


 「のばらちゃん…!!」

 一人の少女が部屋に倒れていた女の子に駆け寄っていく。彼女の名前は佐倉蜜柑―――――。
 今、この部屋にはのばらと蜜柑しかいない。それはとても不都合だった。…のばらは傷だらけで帰ってきていたのだ。

「のばらちゃん…っ! どうして…?」
「…ぅ…。…み、かんちゃ…」
「のばらちゃんっ!!」

 のばらは傷だらけにもかかわらず、蜜柑の方を見てニコリ、と微笑んだ。
 傷だらけで血まみれな姿に似つかわしい微笑み。…どこか、嫌な予感を覚えて。
 背筋を冷たい何かでなぞられたように寒気がする。のばらは体を起こすことができない。そして、この部屋には誰もいない。

「…大丈夫。私は、蜜柑ちゃんがいてくれて、…とても、嬉しかったんだよ」
「でもっ!! ウチのせいで…ウチのせいでのばらちゃんは…!!」
「違うわ。それは違う。…蜜柑ちゃんは、悪くない。……だって、蜜柑ちゃんは、危力系のみんなを…、その笑顔で救ってくれた」

 涙をこぼす蜜柑の表情が固まった。
 違う違うともう一度首を振る。しかし、のばらはそれを譲らなかった。空に陽が昇っていくのに対し、こちらはだんだん闇に沈んでいく。
 のばらの体は、だんだん冷たくなっていった。氷のように。―――――そして、顔は青白く、起き上がることもできない。

「…蜜柑ちゃん、私がいなくなっても悲しむ必要はないわ。…私は、蜜柑ちゃんと生きることができて本当に良かった」
「―――――のばらちゃん、ウチは悲しむで? だって、ウチ…っ!! ……のばらちゃんの、友達やんかっ!!!」

 のばらが逆に固まる。
 蜜柑はもう涙を隠さなかった。零れ続ける涙を無視して、のばらに向き合っている。
 それを見て、のばらは少し嬉しそうに笑い、蜜柑にもたれかかった。

「のばら、ちゃん…?」

 ―――――――――――――――………。
 熱い涙が頬を伝って流れ落ちた。




* end...

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