短編
□宝石の姫と若き剣士達
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「ケルディオ、大丈夫?」
アブソルイヴは、流れ落ちる水を浴びるケルディオに声を掛ける。
「平気…だよ。あんな技があるなんて、思わなかったけど…」
「セレビィは凄い技が幾つかあるからね」
ケルディオはセレビィと何度か逢ったことがあるが、先程のような大技を使う所は初めて見た。
「セレビィ、さっきの技って、ディアルガの技だろう?何で使えるの?」
「最初からよ。気が付いたら、使えたの」
ケルディオの問いに、息を整えたセレビィは答えた。
「次元移動も、最初から使えた…。だからこそ、あたしは他の仲間より狙われ易いの。見た目も違うから、尚更だけど」
特殊な外見や能力の為、人間に狙われる。
そのような魔獣を何度も見てきたケルディオは、何も言えなかった。
「あ、そうそう。この後、時間ある?」
気まずくなったと思い、セレビィは話題を変えた。
「時間があったら、この近くにグラシデアの花畑があるから、一緒に行かない?」
「本当!?」
ケルディオは嬉しそうに訊いた。
「みんな!行こうよ!」
「…いいだろう。行こう」
コバルオンは頷き、セレビィを見た。
「セレビィ、案内してくれ」
「ええ。こっちよ」
セレビィは先頭に出ると、案内を始め、コバルオン達は後を追った。
「ここよ」
セレビィに案内されたのは、一面に咲き誇るグラシデアの花畑。
風が吹くと、その都度、赤とも濃いピンクとも言える花びらが舞った。
「綺麗だね…」
「あ、見て!」
セレビィが指差すと、花畑のあちこちからシェイミが顔を出した。
「シェイミだ!」
「どうやら、これから『花はこび』をするみてぇだな」
「!花はこび?」
テラキオンが言ったことを、アブソルイヴは復唱した。
「確かイヴは、花はこびを見るのは、初めてでしたね?」
「はい。いつか見てみたいって、思っていたんです!」
ビリジオンに、やや興奮した様子で答えていると、花畑にいるシェイミ達の姿が変わり、次々に空へ舞い上がって行く。
「もうすぐよ」
シェイミ達は花畑の中心で、大きく円を描いて飛ぶ。
風に舞った花びらがシェイミ達の周りに飛び、その光景は、空に浮かんだ花束に見えた。
「凄い…!」
それ以外の言葉は出なかった。
アブソルイヴは、シェイミ達の動きを1匹ずつ見ていた。
やがて、シェイミ達は太陽に向かって一斉に飛んで行き、見えなくなった。
「ああやって、次の土地に移り、新たな花畑を作っていくんだ」
シェイミ達が飛んで行った方向を見つめ、コバルオンは呟いた。
「僕達みたいに、いろんな所を旅してるんだね」