白黒の理想郷
□第7話
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「あームカつく!」
リコリスはイラつきながら、ドーナツを口にする。
「人のことバカにして、難しい言葉並べて、何様だっつーの!全く…!!」
あの後、ドーナツ屋を見つけたリコリスは、さっそく中に入り、好みのドーナツを大量に買い、店内で食べている。
シンオウ地方のドーナツ屋と違う店だが、味は良かった。
ドーナツが減るのと同時に、ノワールへの愚痴が増えていく。
「…この後どうしよう」
ドーナツを食べながら、外を見る。
時刻は夕暮れ。
街は夕陽に照らされている。
「泊まるのは、やっぱりポケモンセンターかな」
ポケモンセンターは、宿泊も無料だとノワールが言っていた。
ホテルに泊まることも出来るが、旅に出た初日からホテルを使用していたら、所持金があっという間に底を尽いてしまう。
「ご飯美味しいのかな…。どんな感じなんだろう」
リコリスは食べ終わると席を立ち、ドーナツの載っていたトレイと、ドリンクのコップを片付け、ドーナツ屋を後にする。
「明日のことは、明日から決めようかな」
ポケモンをもらったら、すぐにでもシンオウ地方に帰れると思っていたが、ポケモンがいても状況は変わらないと気付いた。
(すぐには帰れないし…。どうするかな)
そんなことを思っていた時だった。
プルル!
ライブキャスターが鳴り、出てみた。
相手はチェレンだった。
「あ、チェレンくん」
『リコリス、今いいかい?』
「うん、いいよ」
リコリスは足を止め、近くの壁に寄りかかった。
『ぼくはもうすぐサンヨウシティに着くけど、君はどこにいるの?』
「あたし?あたしはもうサンヨウシティにいるよ」
『え!?もう着いたのかい!?』
自分より先に来ていたリコリスに、チェレンは驚く。
「あーうん、ノワールのメェークルに乗せてもらったから…」
言い争ったことは言わなかったが、早く街に来れたことは伝えた。
『そっか…。メェークルに乗ったから、早く着いたのか…。ところで、リコリスは交通費とか請求された?』
「されたわよ!もう、何様!?って感じよ!!」
『君は何を請求された?パフェ?それともランチ代?』
「へ…?チェレンくん、何言ってんの?」
チェレンの言ったことが判らず、リコリスは聞き返す。
『何って、交通費の請求だよ。君もされたんだろう?』
交通費がパフェやランチ代。
ノワールが請求しようとしてたのは、それらのことだったのか?
チェレンは話を続ける。
『前に、ぼくとベルがそれぞれメェークルに乗せてもらった時、ぼくはパフェを奢らされて、ベルはその日のランチ代を払わされたんだ』
「あーそうなんだ…」