白黒の理想郷

□第8話
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翌朝、リコリスはポケモンセンター内の食堂で、朝食を食べていた。
ノワールと通信で会話した後、イラつきながらポケモンセンターに直行した。

「もうあいつに、こっちから連絡するのやめよ」

ぼやきながら、パンにかぶりつく。
リコリスの足元では、ポケモン達も食事をしている。

「みんな、食べ終わったら、サンヨウジムに行くからね」

そう言うと、ポケモン達は返事をした。


朝食の後、リコリスはポケモンを出したまま、ポケモンセンターを後にする。

「さーて、初めてのジム戦だよ。みんな、張り切っていこうね!」

声を掛けた時、突然チュリネが走り出した。

「ちょっとチュリネ!どこ行くの!?」

チュリネは止まらず、街外れに向かう。
目線の先に、廃墟のような建物が見えてくる。

「何ここ…」

持っている電子タウンマップを出して見てみた。

「『夢の跡地』…。何かの工場跡みたいね」

廃止されて長いのか、廃墟同然の跡地は、子供やポケモン達の遊び場になっているらしい。

「あ!チュリネ!!」

リコリスは慌ててチュリネを捜す。
すると、崩れた壁の側に立つ木の前に、チュリネがいるのを見つけた。

「こんな所にいたの?チュリネ」

「チュリー…」

チュリネが木の前から退くと、そこには1匹のポケモンがうずくまっていた。

「ん?このポケモンは?」

大きな毛虫のようなポケモンがいた。
リコリスはポケモン図鑑を出し、調べてみた。

「たいまつポケモンの…メラルバ?」

メラルバは、リコリスを見上げる。

「生息してるのは、火山帯や乾燥した地域?全然違うじゃない、ここ…」

緑に囲まれたこの場所は、メラルバが生息しているとは、とても思えなかった。

「誰かのポケモン?それとも、逃がされたのかな…?」

「メラ、メラッ」

メラルバは何かを訴えてくるが、リコリスには解らない。

「え?何?」

「チュリ」

チュリネはメラルバを指す。
メラルバはリコリスを見上げ、上体を忙しなく動かしている。

「もしかして…あたしと一緒に来たいの?」

そう訊くと、メラルバは頷いた。

「トレーナーはいないから野生みたいだけど…。でも、何でこんな所に?」

「メラ〜ッ」

「あ、ごめんごめん」

リコリスはモンスターボールを出し、メラルバに向けた。
メラルバはボールに入り、数回動き、やがて止まった。

「メラルバゲーット!」

「チュリー!」

チュリネは嬉しそうに飛び跳ねた。

「チュリネ、メラルバがここにいるって、よく分かったね」

「チュリチュリ」

「でも、何でメラルバがこんな場所に?」
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