月の残像

□第1話
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新八が帰宅し、神楽が眠った深夜。
銀時は、物音を立てないようにして、万事屋を出た。

「ちょっと隠れてるな…」

見上げた空には、満月が出ているが、今は雲で隠れてしまっている。
手にした書簡を広げ、目で読む。

『ぎんときへ
きょうのよる2じ、じんじゃでずっとまってます』

ひらがなで書かれていた書簡は、子供が書いたような字だった。
悪戯かと思ったが、何故か気になり、その場に向かっている。

(あの手紙……)

考えながら、神社に向かった。


(どこにいる?)

指定された神社に着き、銀時は辺りを見回す。
時間帯もあってか、人気は全く無く、街灯があまりないこともあり、視界が悪い。

「…まさか、本当にただの悪戯だったりしてな」

畳んだ書簡を見て、呟いた時。

「来てくれたんだ」

男の声が聞こえ、反射的に木刀を握り、振り返った。
が、誰もいない。

「誰だ!」

木刀を握る手に、自然と力が入る。
警戒しながら、周囲を見る。

「やっぱり…。俺のこと、忘れちゃった?」

声が間近で聞こえ、ゆっくりと後ろを向く。
そこには、1人の男が立っていた。
暗い為、顔が見えない。

「久しぶり。って言っても、もう分かる訳ないか」

雲の合間から月光が漏れ、男の顔が少し見えた。

「おまえ……!」

呟くように言った銀時の口に、男は薬品を染み込ませた布を当てた。

「!?や、やめ…ろ…」

目を閉じ、男は脱力した銀時を受け止める。
銀時の手から、木刀と書簡が滑り落ちた。
書簡は、風で飛ばされていった。


「…江戸はやっぱり、落ち着かないな」

男は銀時を背負い、街を見下ろす。

「早く行こう。静かな所に」

肩越しに振り返り、男は言った。
口元は微笑んでおり、前を向くと、その場を後にした。


背負われた銀時は、僅かに顔を上げる。
ぼんやりと開けた目は、光が無く、焦点も定まっていない。

「……」

銀時の記憶が、色を失い、次々に消えていく。
殆どの記憶が消えたのと同時に、目を閉じ、意識を失った。


翌朝、新八は万事屋にやって来る。

「おはようございまーす」

返事が無いのも、いつものことだ。
銀時と神楽が、早く起きていることはまず無い。

「さてと、起こすかな」

先に押し入れを開け、神楽を起こす。

「神楽ちゃん、朝だよ」

「う〜ん、あと5時間……」

「だーめ!5時間って、どんだけ寝る気だ!!」

怒鳴りながら神楽を起こし、銀時を起こそうと和室を見る。

「あれ?」

部屋の襖が開いており、銀時の姿は無い。

「銀さん?」

「新八〜どうしたネ」

目をこすりながら、神楽が来る。
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