月の残像

□第2話
1ページ/3ページ


布団に寝かせられていた銀時が目を覚ましたのは、見覚えの無い部屋だった。

「…どこだ?ここ……」

起き上がって部屋を見回した後、自身の身体を見る。
服装が、黒い着流しになっている。

「よっ…と」

服装を気にせず、壁に手をついて立ち上がる。
開け放たれた窓から、外を見た。

「どこだ……?」

外を見て、強い西日に目を細め、景色を見る。
見えたのは、山と少し遠くにある海だった。

(俺、何でこんな所にいるんだっけ…?)

ガタッ

物音に振り返ると、紺色の着流しを着た、銀時と同じ位の身長の黒い短髪の男が立っていた。

「銀時っ!」

男は嬉しそうに、銀時に駆け寄る。

「おい!誰だ、てめェ!?」

少し後ずさる銀時を見て、男は立ち止まる。

「銀時…、俺だよ。俺の顔、よく見て」

銀時は男の顔を注意深く見る。
と、僅かに目を見開く。

「びゃ…く、や。白哉(びゃくや)…か?おまえ」

白哉と呼ばれた男は、頷いた。

「良かった…。俺のこと、分かって」

「おい、分かってって、どういう…」

聞き返そうとした時、ひどい頭痛がし、頭を押さえて銀時はうずくまる。

「銀時!大丈夫か!?」

「……ああ」

「もう少し、寝てた方がいい…」

「そうだな……」

弱々しく頷き、白哉に支えられて横になる。

「何か食べるか?持ってくるけど」

「いや、今はいい」

横になりながら、白哉の顔を見る。

「あの時と逆だな…」

あの時という言葉を聞き、白哉は小さく笑った。

「そうだな」

「…あの時は、俺がおまえの面倒みて…」

そこまで話すと、銀時は目を閉じ、眠った。


とても幼い頃、銀時は1人、道を歩いていた。
銀時には、物心が付いた頃から家も親も無い孤児だった。

「あ……」

道の先に、自分より少し年下位の少年がいた。
少年は、うつ伏せで倒れている。
近くに行き、少年を見下ろす。

「死んでんの?」

しゃがみ込み、呟いた。
何か持ってないかと思い、少年に触れた。

「ん……?」

触った瞬間に、少年は目を開け、銀時は咄嗟に手を引っ込めた。

(死んでなかったのか…)

軽く舌打ちする銀時を、少年は起き上がって虚ろな目でじっと見る。
銀時と違い、黒い髪に群青色の瞳と対照的な色をしている。

「何だよ。人の顔ジロジロ見て」

ムッとしながら訊くと、少年の腹が鳴った。

「腹減ってんのか?」

少年は無言で頷いた。
どうやら、少年は行き倒れていたようだ。

「しょうがねェ。これ、ちょっとだけやるよ」

銀時は、先程死体から漁ったおにぎりを少し割り、少年にあげた。
少年はおにぎりを受け取ると、夢中になって食べ始める。
余程食べていなかったらしい。

「じゃあな」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ