月の残像

□第5話
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銀時と白哉が去った後、新八と神楽は座り込み、桂は立ち尽くしたまま、ずっと黙っていた。

「ヅラ!」

「新八くん、神楽ちゃん!」

声のする方を桂が見ると、高杉と刹那が走って来る。

「おまえ達…」

「おい、ガキ共はどうした?」

新八と神楽は、俯いたまま座っている。

「どうしたの?何かあった?」

「……銀時に、会った」

「本当!?」

「ああ……」

頷きながら、桂は目を逸らす。

「それで、どうした?」

「銀さん…、僕達のことが分かんなかったんです」

顔を上げ、新八が呟くように言う。
神楽も、同じく言った。

「私達を誰って言ってたアル。それに、何で自分のことを知ってるのかって言ってたヨ…」

「え?何…それ……」

「俺が思うに、銀時は多分記憶を失っているんだろう。…自分のことが分かっているから、一部だと思うが」

呆然とする刹那に、桂が言った。

「…それで、銀時はどこ行ったんだ?」

辺りを見回した後、高杉が桂に訊いた。

「突然現れた、見知らぬ男に連れて行かれた」

「見知らぬ男?」

「どんな人だったの?」

「黒い髪に、紺色の着物の男だった。そいつが、関係しているのだろう」

「誰だろうと、関係無いネ……」

座ったまま、神楽が呟いた。

「銀ちゃんが記憶を失くしてても、私達のことが分からなくても、必ず一緒に帰るネ!!」

「そうだね。早く、銀さんを捜して一緒に帰ろう」

答えるように新八が言うと、立ち上がる。
神楽も一緒に立つ。

「おまえ達だけにやらせはせん」

「私も捜すよ!」

「しょうがねェ、貸し作っといてやるか」

桂達がそれぞれ言った。
新八と神楽は頷き、5人で、銀時を捜すことにした。


「なんなんだ、あいつらは!?」

自宅に走って帰ってきた白哉は、苛立ちながら、背負っていた銀時を下ろす。

「銀時、大丈夫か?」

座り込んでいる銀時は、視線を床に落としている。

「俺は…あいつらを知ってる……」

銀時に触れようとしていた白哉の手が、ビクッ、と止まった。

「……気がする」

付け加えられた言葉に、少し安心する。

「あのガキ共…、どっかで会った気がする……。どこでだ?」

頭に手をやり、銀時は呟く。
だが、考えても、どこで会ったか思い出せない。

(記憶が、戻ってきてるのか…!?)

白哉は、銀時の様子を見て思った。
消えた記憶は、もう戻らないと思っていたのに。
無言で白哉は立ち上がると、台所に向かった。

「あいつらに…、銀時は渡さない……!」

憎悪と焦燥のこもった声で呟くと、棚から透明な液体の入った瓶を取り出す。
以前、幕府の研究施設にいた時、持ち出していた薬の一部だ。

「今日1日でいい。だから、少しだけだ」

湯のみに緑茶を注ぎ、瓶の薬を少し入れた。

(この位なら、今日の記憶は消える)
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