月の残像

□第7話
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「銀…ちゃん……」

銀時が見えなくなった後、神楽はその場に座り込んだ。

「神楽ちゃん…」

新八は神楽の肩に手を置くが、それ以上の言葉が出なかった。

(今の銀さんは、ただ記憶が無いだけじゃなくて、僕達の知らない人に見えた……)

自分の家族だ、と言った男の所に戻った銀時のことを思った。
仮に記憶があっても、自分達を置いて行くのか?

「私…待ってるアル」

「え?」

「前と同じように、銀ちゃんが戻ってくるのを待ってるネ」

以前、銀時は事故で記憶を全て失ったことがあるが、今回は以前と違う。

「でも……、銀さんが戻ってくるって言い切れないよ」

「それでも!銀ちゃんは、必ず戻ってくるって信じてるネ!!」

神楽の目をじっと見る。
銀時のことを信じている、という目だ。

「そう…だね。銀さんは、戻ってくるよね」

一瞬でも銀時は戻ってこない、と感じた自分を恥ずかしく思い、新八は神楽に笑い返した。


「ふぅ…」

海岸から戻った銀時は、部屋に入った。
白哉は眠っており、銀時が出て行ったことに気付いていないようだ。

「……」

一緒に帰ろう、と言った2人の子供…… 新八と神楽のことを考えた。
全く分からないが、2人が自分を慕っていたのは確かなようだ。

(何も思い出せねェ……。けど)

「一緒に行ったら、白哉は1人になっちまうしな……」

呟きながら、白哉の隣に行った時だった。

「うっ……」

また頭痛が起きた。
しかも、痛みと共に、細切れになった記憶が溢れてくる。

(なん…だ…?)

白く光る満月。
走りつづける、白哉と自分。
谷底の激流。

「うぐっ!あぁぁっ!!」

何かを思い出せそうな気がした。
だが、何故か、思い出してはいけない、と叫ぶ自分がいる。

「銀時!?どうした!?」

呻き声に白哉は飛び起きて、銀時の隣に行く。

「…びゃ…くや……」

荒く呼吸をしながら、白哉を見上げる。

「俺…」

「どこにも行かないで」

突然、冷たい声で白哉が言った。

「え……?」

「そばにいて!俺は、銀時と離れたくないんだよ!!」

銀時の空いている手を掴み、悲痛な声で叫ぶ。

「待てよ白哉、落ち着けよ…!」

取り乱す白哉を、銀時は呆然と見る。

「…ごめん。さっき、怖い夢見て……」

手を離そうとすると、銀時は白哉の手を握り返す。

「心配すんな白哉。俺は、おまえと一緒にいてやっから」

「銀時……」

銀時を見つめる白哉の目は、どこか潤んでいた。
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