月の残像

□第8話
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『この……が、…困った事……してや…』

『だーから……されてん……!!』

『…紹介しろ…!!』

……あれ?なんだこれ?

はっきりと見えない光景と、途切れ途切れの会話……。
それが幾つも浮かんでは、消えていく。

『ということで……くれアル』

『じょっ…冗談じゃ……小娘を…』

何なんだ、これは?

…もしかしてこれは、消えている、俺の記憶……?


「……」

銀時はぼんやりと目を開ける。
窓から朝日が差し込んでおり、白哉が朝食を作っているのか、台所から包丁の音が聞こえた。

「朝か……」

起き上がり、ぽつりと呟く。

(前にも、似たような夢見たな…)

以前と違い、声や風景などが僅かにあったが、それらを見ても何も思い出せない。

「あのガキ共に関することか…?」

『帰りましょう。一緒に!』

『そうアル!記憶が無くても、一緒にいればきっと戻るネ!!』

昨日の夜の出来事を思い返す。
新八と神楽が必死に言っていたのは分かるが、何故そこまで必死だったのかが解らない。

(どこで遭ったんだよ。あのガキ共と……)

「飯出来たぞー」

盆に、ご飯と焼き魚、漬け物と味噌汁を載せた白哉が入って来る。

「ああ…」

布団から出ると、卓袱台の前に座った。

「じゃあ、食うか」

卓袱台の上に食器を置くと、白哉は食べ始める。
銀時は手を付けず、やや俯いている。

「どうした?食わないのか?」

「白哉…」

「ん?」

「俺の記憶が消えてんのって、何かに襲われたからなんだよな…?」

白哉は手を止め、黙って頷く。

「ずっと眠ってたんなら、どうして戦争に出たり、あいつらと一緒にいたんだ…?おまえが言ってたことは、本当なのか!?」

語気が強くなった時、頭痛が起こる。

「くっ…!!」

「おい、無理すんなよ…!」

銀時は頭を押さえながらも続ける。

「おまえのこと、疑ってる訳じゃねェけど…本当のこと知ってんなら、教えろよ…!」

白哉の胸ぐらを掴み、縋るように言うが、頭痛は更に酷くなる。

「…っあァァッ…!!」

掴んでいた手がずり落ち、銀時は頭を抱えて倒れる。

「銀時…っ!」

その姿を見て、白哉はどうしようか考える。
だが、思い付いたことは、『あの方法』しかなかった。

「ちょっと待ってろ」

一度部屋から出ると、薬の入った瓶を持ってくる。

「ほら、これ飲めよ。頭痛が少し治まる筈だ」

猪口に薬を注ぎ、差し出した。
以前飲ませた物と、同じ薬だった。

「ああ…」
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