月の残像

□第9話
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あれから3日が経ったが、桂達は何も手掛かりを得ることが出来なかったという。

「小太郎さん達も駄目だったのね…」

刹那は携帯を片手にぽつりと呟くと、ベンチに座り、近くで買ったアイスを口にする。

(やっぱり、もう一度あそこに行った方がいいかな…)

「バニラーッ!」

考え事をしていた時、神楽の声が聞こえ、顔を上げた。

「!神楽ちゃん」

「何してるアルか?」

刹那の隣に行き、顔を覗き込む。

「ちょっと、考え事」

「ふーん。…あ、またアイス食べてる」

「なんか、外で神楽ちゃんと逢う時、私ってよくアイス食べてるね…」

「そうアルナ」

刹那が外でアイスを食べている時は、よく神楽と顔を合わせる。

「神楽ちゃんも食べる?お金あげるけど」

「マジでか!?バニラ、ありがとう!!」

刹那から小銭を貰うと、神楽は嬉しそうにアイス屋に行った。

「確か、初めて逢った時は、ミルク味だったんだよね…」

今食べているのは苺味だが、神楽と最初に逢った時はミルク味を食べていた。

(それを遠目で見てたから……)

神楽が刹那を『バニラ』と呼ぶのは、食べていたミルク味のアイスをバニラ味と勘違いした為。
バニラと呼ばれることに対しては、特に抵抗はないが。

(バニラ味より、ミルク味の方が好きだけどね)

残ったアイスを一口で食べると、刹那は立ち上がった。


同じ頃、銀時は白哉と一緒に散歩をしていた。

「歩いて大丈夫だったか?」

「……ああ」

時折頭痛が起こるが、しばらく眠れば治った。
だが、それと同時に気になることがあった。

(寝れば、何かを忘れる気がする……)

頭痛と共に何かがあった気がするが、その『何か』が判らない。

「今日は、海が荒れてるな」

気付くと、浜辺に来ており、白哉が言う通り海は荒れていた。

「そうだな…」

あまり感心が無さそうに呟く。
じっと海を眺めていると、ある光景が脳裏に浮かぶ。

(あれ…?何だ?)

何かが分かりそうになった時だった。

「あ…」

聞き覚えのある声に顔を向けると、そこには刹那が立っていた。

「銀時さん…」

「…刹那…か…?」

銀時が呟くのと同時に、白哉が刹那の前に出る。

「あなたが…、銀時さんの言っていた家族?」

それに答えず、白哉はナイフのような物を取り出し、刹那に向ける。

「銀時は渡さない…!」

「待って。私はあなたと戦うつもりは」

「うるせぇっ!」

警戒した白哉に刹那の声は届かず、そのまま襲いかかってくる。

「くっ…!」

刹那は避け、普段から隠し持っている小刀を出し、応戦する。

「白哉、やめろ!刹那は敵じゃねェ!」
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