月の残像

□第14話
1ページ/2ページ


「これ…使えそうだな」

夜中、白哉は施設にある武器庫に忍び込み、ナイフを手に取る。

「お…!?」

ナイフをいろいろな角度から見ていると、それが折り畳み式の槍だと判った。
白哉は槍を懐にしまい、武器庫から立ち去る。

(逃げ出すのは、そろそろかな…)

銀時と離れ離れになってから7年が過ぎ、白哉は14歳になった。

(こんなに経っちゃったけど、銀時はどうしてるんだろう……)

崖から突き落とされる直前に見た、銀時の顔を思い浮かべる。

(どこかで、必ず生きてるよな…)

不意に、考えたくないことが頭をよぎる。
もしかしたら、あの後大人達に殺されてしまったのかもしれない。
もう、この世にはいないのかもしれない……。

(!何考えてんだ俺は…!!)

首を振り、そんなことは無い、と自身に言い聞かせ、寝起きしている部屋に戻った。


それから数日が過ぎた深夜。
白哉は資料室で、様々なファイルや書類を見る。

(この施設の場所はだいたい判った。あとは…)

攘夷戦争関連のファイルを捲り、戦渦の状況を調べる。

(江戸の中心部は近付かない方がいいみたいだ。…ここまで戦いを続けてると、有名になる奴らが結構出て来るな)

その中には、本名ではなく通り名だけの者もおり、ある名前に目が止まる。

「これってまさか…」

『白夜叉』と書かれた人物の特徴を見て、銀時ではないか、と思った。

(もしそうなら、江戸へ行った方が)

そう思った時、警報が鳴り響いた。

「何だ…!?」

『火災発生!直ちに避難せよ!!』

「火災!?何で…!?」

白哉は走り、部屋に戻ると、盗んでいた槍や資料などを手にする。

(逃げ出すのは今だ!)

この7年間で、ずっと一緒にいた者はいない。
人員は常に入れ替わり、施設から出て行って、二度と戻って来なかった者もいた。

(まずは、敷地から出ることだ)

火災に紛れ、何とか無事に出る方法を考える。
すると、話し声が聞こえ、咄嗟に隠れる。

「火災の原因は!?」

「天人による襲撃のようです!」

施設の研究員達が口々に言っている。

「例の薬はどうした!?」

「まだ、倉庫にあると思います」

「あの薬を、天人共に決して渡すな!!」

研究員達は走り去り、白哉はそっと顔を出す。

「薬?何の薬だ?」

天人に決して渡すなと言っていたことから、ただの薬ではなさそうだ。

「……」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ