月の残像
□第14話
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「これ…使えそうだな」
夜中、白哉は施設にある武器庫に忍び込み、ナイフを手に取る。
「お…!?」
ナイフをいろいろな角度から見ていると、それが折り畳み式の槍だと判った。
白哉は槍を懐にしまい、武器庫から立ち去る。
(逃げ出すのは、そろそろかな…)
銀時と離れ離れになってから7年が過ぎ、白哉は14歳になった。
(こんなに経っちゃったけど、銀時はどうしてるんだろう……)
崖から突き落とされる直前に見た、銀時の顔を思い浮かべる。
(どこかで、必ず生きてるよな…)
不意に、考えたくないことが頭をよぎる。
もしかしたら、あの後大人達に殺されてしまったのかもしれない。
もう、この世にはいないのかもしれない……。
(!何考えてんだ俺は…!!)
首を振り、そんなことは無い、と自身に言い聞かせ、寝起きしている部屋に戻った。
それから数日が過ぎた深夜。
白哉は資料室で、様々なファイルや書類を見る。
(この施設の場所はだいたい判った。あとは…)
攘夷戦争関連のファイルを捲り、戦渦の状況を調べる。
(江戸の中心部は近付かない方がいいみたいだ。…ここまで戦いを続けてると、有名になる奴らが結構出て来るな)
その中には、本名ではなく通り名だけの者もおり、ある名前に目が止まる。
「これってまさか…」
『白夜叉』と書かれた人物の特徴を見て、銀時ではないか、と思った。
(もしそうなら、江戸へ行った方が)
そう思った時、警報が鳴り響いた。
「何だ…!?」
『火災発生!直ちに避難せよ!!』
「火災!?何で…!?」
白哉は走り、部屋に戻ると、盗んでいた槍や資料などを手にする。
(逃げ出すのは今だ!)
この7年間で、ずっと一緒にいた者はいない。
人員は常に入れ替わり、施設から出て行って、二度と戻って来なかった者もいた。
(まずは、敷地から出ることだ)
火災に紛れ、何とか無事に出る方法を考える。
すると、話し声が聞こえ、咄嗟に隠れる。
「火災の原因は!?」
「天人による襲撃のようです!」
施設の研究員達が口々に言っている。
「例の薬はどうした!?」
「まだ、倉庫にあると思います」
「あの薬を、天人共に決して渡すな!!」
研究員達は走り去り、白哉はそっと顔を出す。
「薬?何の薬だ?」
天人に決して渡すなと言っていたことから、ただの薬ではなさそうだ。
「……」