月の残像

□第15話
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「その後は、ひたすら遠くに行くことだけを考えた。行く宛はなかったけど、なるべく静かな所に行きたかった」

「それで、ここに住んでたのか…」

白哉の話を聞き、辺りに波の音だけが響いた。

「おまえがいたと言う施設は、確かに天人に襲撃され、壊滅した。その際に、薬も全て破棄されたそうだ」

桂が言うが、白哉は聞き流している。

「…銀時を捜す為に、江戸へ行ったこともある。でも……」


江戸から適度に離れた所で暮らすようになって、数年が経った。
その間も、白哉はずっと銀時を捜していた。

「あんまり行く気がしないけど、江戸に行ってみるか…」

戦争の後、江戸はかなり発展したと聞く。
行く気がしなかったが、銀時を捜す手掛かりがあるかもしれないと考え、江戸に向かうことにした。


「あ……!」

江戸中を見て回り、かぶき町へ来た白哉は、銀時が歩いているのを見つけた。
昔の面影があった為、すぐに銀時だと分かった。

「銀時っ!」

白哉は走り、銀時の前に行く。

「あの…」

「……誰?おまえ」

銀時は、白哉を怪訝そうに見た。

「え……」

「どっかで遭ったか?…用もねーのに、声掛けんなよ」

そう言うと、銀時は去って行った。

「銀時…、俺のこと、忘れちゃったのか……?」

成長したから、分からなかったのかもしれない。
だが、銀時が自分に向けた目は、他人を見る目だった……。

「どうして……?」

一緒にいたのに。
家族だった筈なのに。
どうして、分からないんだ……。
そんな想いが溢れ、白哉はあることを決意した。


「次の日に、俺は銀時に手紙を書いて夜中に呼び出した」

幼い頃の字に似せて書いた手紙を万事屋に届け、盗み出した薬を手に、神社で待った。

「でも、銀時はやっぱり俺のことを忘れて」

「忘れてねーよ」

「え?」

その一言に、白哉だけでなく、他の者達も銀時を見る。

「確かに最初に会った時は、おまえのこと忘れてた。でも、あの後……」


万事屋に戻った銀時は、ジャンプを読みながら寝てしまい、その時に夢を見た。

(ん……)

道端で倒れている、黒髪の少年。
だが、顔がよく見えない。

(誰だ……?)

自分と一緒に食べ物を分け、笑いあっている。

『名前、まだ言ってなかったね』

少年の声が聞こえた。
同時に、ドクンと胸が高鳴った。

(俺は…こいつを知ってる……)

『俺は……』

銀時は目を見開き、ガバッと起き上がった。
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