短編

□天使との約束
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最後の戦いから半年。
エドとアルは自分達の身体が元に戻ったことの報告と挨拶回りを分担して行っていた。

「あ〜今日の分は、終わりっ!と」

背伸びをし、エドはホームに入ってきた列車に乗った。

「アルの方は、終わったかな…」

独り言を言いながら座席に座り、窓の外を見た。

「ちょっと早ぇけど、帰るか」

ふと、見覚えのある景色が見えた。
まだ1年程しか立っていないのに、懐かしく思えた。

「ここ…ヒースガルド地方か……」

呟き、その地方にあるノイエヒースガルドでの出来事を思い出す。

「アルモニ……」

今は亡き少女の名が自然と出た。

「まだ…おまえやセレネ、教授に言ってなかったよな……」

エドは立ち上がり、次の停車駅であるノイエヒースガルドに降り立った。

「変わってないな。この辺は」

駅周辺は、以前と殆ど変わっていない。
が、以前よりも花の数がずっと増えている。

「えーっと、確か教会は…。あっちか」

教会へと続く道をエドは歩く。
あの時は、アル、そしてアルモニと一緒に走ったり、歩いたりした道だ。
立ち止まり、山を見た。

「…あるかな。あの花」

あの花……。
アルモニと最初に会った時、彼女が持っていたエーテルフラウのことだ。
白く細長い花弁を持ったあの花を持っていこうと、エドは考えた。

(いや、この時期じゃもうねぇかも……)

以前来た時と、季節が違う。
もう無いかもしれない、と思いながらも、エドはエーテルフラウが生えていた湖畔へ向かった。


「ここも変わってないな」

草原と澄んだ湖、所々にある石柱。
その場も、以前と変わっていなかった。
エーテルフラウが無いことを除けば……。

「やっぱ…、もう無いか……」

それでもエドは諦めきれず、湖畔の周囲を探し回る。
もしかしたら、一輪だけでも残っているかもしれない、と思いながら。

「……あった!」

小さめだったが、一輪のエーテルフラウを見つけた。

「あと、もう一つ位ないか…」

エーテルフラウを摘み、再びエドは花を探した。

「無いな……」

倒木の上に座り、ため息を付く。

「仕方ねぇ、違う花を持ってく…ん?」

視線の先に白い物が見え、その場に駆け寄る。
倒れた石柱の影に、エーテルフラウが咲いていた。

「あった!しかも2つ!」

最初に見つけた花と同じ位の大きさのと、少し大きめの花があった。

「これで、教授とセレネ、アルモニに供えられるな」

エドは、摘んだエーテルフラウを大切に持つと山を下り、3人の墓がある教会へ向かった。


「久しぶり。教授、セレネ。…アルモニ」

墓石に声を掛け、持っていたエーテルフラウを供える。
小さい花をセレネに置き、大きい花をヴィルヘルムに置こうとして止める。

「悪ぃ教授。ち、こっちで我慢してくれるか?」
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