短編
□響‐こえ‐ 〜伝えたい真実〜
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火球の降り注ぐ屋敷。
その上空に、英雄を導くと言われる、真っ白なポケモンがいた。
「…ぜだ。何故だ!レシラム!!」
ゲーチスが叫んでいる。
ある儀式を行い、レシラムを呼び寄せた者としては、この状況はあまりにも予想外だった。
「何故怒りを…。何故怒りを抱いているんだ!?レシラム!!」
ボクは必死で叫んだ。
レシラムは強く激しい怒りを抱きながら、火球を屋敷に放っている。
「答えてくれ、レシラム!!」
レシラムは答える代わりに雄叫びを上げ、人間に対する怒りを、ボクにぶつけてきた。
「レシラム…!」
「N(エヌ)でも駄目だというのか…!」
と、ゲーチスの声が僅かに聞こえた。
だが、信じられない言葉が続けられた。
「イヴでゼクロムを従えさせようとした失敗を踏まえ、今度はNを使い、慎重に行おうとした計画が、何故こうなる…!?」
ボクは目を見開き、息を呑んだ。
昔、イヴとセレビィが別れの前に言っていた話が甦る。
「ゲーチス…。あなたは本当に、ボクを騙して…」
ゲーチスに歩み寄ろうとした時、頭上からレシラムの咆哮が聞こえ、上空を見た。
そこには、〈あおいほのお〉を放とうとするレシラムが、ボク達を見下ろしていた。
「やめてくれ…、レシラム…」
ボクの呟きを掻き消すように、レシラムは咆哮と共に〈あおいほのお〉を放った。
(やられる…!!)
腕を前に翳し、そう思った時だった。
『N…!!』
突然、懐かしさのある声が聞こえた。
「!?今のは……うわあっ!!」
爆発で足元が崩れ、空の彼方へと飛んで行くレシラムの姿を見ながら、ボクは意識を失った。
壮絶な一夜が明け、あちこちが崩れ、焼け落ちた屋敷から、ヘレナとバーベナはNを担いで出て来る。
「ゲーチスは、私達を騙していた…」
「イヴとセレビィの警告を信じていれば、こんなことには…」
ヘレナとバーべナは、呆然と呟いた。
「……が」
微かな声が聞こえ、2人はNを見た。
「N…!」
「気が付きましたか?」
「イヴが…。イヴがボクを、助けてくれた…」
Nの発言に、ヘレナとバーべナは顔を見合わせた。
「イヴが…?」
「ですが…彼女はもう、ここには……」
「あれは、間違いなくイヴの声だった。イヴは、ボクを助けてくれた。ボクは、そう信じてる…!」
Nは、琥珀色の石が付いた指輪を取り出す。
イヴが別れの時にくれた物だが、もう小さくなってしまい、嵌めることは出来ない。
「イヴ…。君は今、どこで何をしているんだろう…」
「はっ…!」
うたた寝をしていた刹那は目を覚ました。
「……N」
目の前に置いていた、アルセウスから貰った水晶玉は、先程まで、Nの今の様子を映していた。
「大丈夫だよね…」