短編

□黄昏に散る
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世界の3割の人間を殺したウイルス・白詛。
感染した者は、毛髪の色素が全て抜け落ち、半月を待たずに死に至る。
その白詛に、高杉も侵されていた。

「入るでござるよ」

万斉は、高杉の自室の戸を開けた。
室内に敷かれた布団に、高杉は寝ている。
紫色だった髪は、白詛の影響で白くなり、最早見る影も無い。

「……万斉か?」

高杉は目を開ける。
右目は焦点があっておらず、包帯をしていない左目に、白くなった髪がかかる。

「ああ……」

掠れた声の高杉に、万斉は震えた声で答える。

「何か……あったか?」

「いや。特には…」

高杉の症状は、日に日に悪くなっていく。
それこそ、いつ最期を迎えてもおかしくない程に……。

「そうか…。何も無ェ……か」

弱々しく呟き、目を閉じた時だった。

「万斉先輩!ちょっと来て下さい!!」

外からまた子の声が聞こえ、万斉は振り返る。

「どうした?」

「桂が…!桂が来てるっス!!」

「何…!?」

「……ヅラが?」

僅かに目を開けると、万斉が出て行く気配を感じた。


白詛が世界中に蔓延し、高杉も白詛に侵されたことにより、今や鬼兵隊は、幹部と数人の部下しか残っていない。
桂1人でも、易々と船の中へ入れた。

「おい。高杉はどこだ?」

甲板にいた部下達をなぎ倒し、桂は万斉と対峙する。

「…晋助の首を取りに来たでござるか?」

「違う」

桂は否定するが、万斉とまた子は警戒を解かない。

「晋助様は殺させないっス!!」

また子は銃を撃ち、桂は避ける。

「だから違うと言っているだろう!!話を聞け!!」

「……やめろ」

弱々しい声が聞こえ、見ると、船内へと続く出入り口に、寝巻き姿の高杉が立っていた。

「高杉…!」

白くなった髪に、壁で身体を支えている姿を見て、桂は思わず息を呑む。

「晋助、何をしている!?」

「寝てなきゃ駄目っスよ!!」

「…よォ、ヅラ…」

万斉とまた子の声をぼんやりと聞き、高杉は口を開くが、そのまま倒れた。


倒れた高杉を自室へ運び、寝かせた。
桂はその様子を、じっと見つめている。

「発症して、何日になる?」

「もう……半月になるっス」

半月……。
白詛に侵された者からすれば、かなり持ちこたえている方だった。

「だが。もう……」

万斉もまた子も分かっていた。
高杉はもう、永くないことを……。

「……ヅラァ、そこにいるか?」

うっすらと目を開けた高杉は、桂を捜す。

「ああ…。ここにいるぞ」

桂の声を聞いて、高杉は頷く。

「おまえらは、出てろ。ヅラに…話がある」

「……分かった」
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