短編

□finale 〜見つめる終わり〜
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「ん…?」

ある時、ずっと朦朧としていた意識が、何故かはっきりしていた。

(どこだ…?ここ…)

自分は、どこか高い所に立っていた。
眼下には、夕陽に照らされた海と埠頭が見えた。
その埠頭に、誰かが歩いている。

「……!」

髪は真っ白だったが、着物の柄で、それが誰か判った。

(高杉…!?)

俄かには信じられなかった。
高杉までウイルスに感染し、白詛になっていたとは……。

(あいつ…あんな身体で、何して)

と、身体が動き、埠頭に降り立った。
そのまま、高杉が歩いて行った道を追い始めた。

(何…する気だ…!?)

高杉の後を追い、このまま止めを刺すつもりなのか。
いくら袂を分かっていても、こんなやり方は望んでいない。

「……!」

後を追った先には、うつ伏せで倒れる高杉の姿があった。

「高杉!!」

思わず叫んだ。
声が出せるとは思わなかった。
ウイルスの影響か、今まで声をまともに出せなかったが、今は関係ない。

「高杉…!」

駆け寄り、呼吸を確認する。
弱々しいが、息はあった。

「おい!おい、起きろよ!!」

呼び掛けると、高杉は目を開ける。
が、その瞳に光は無く、白い髪が顔に掛かっている。

「やっと起きたか」

「ぎん……とき?」

か細い声を聴き、安堵と同時に、強い罪悪感を感じた。

(こいつも、俺のせいで……)

そう思いながら、うつ伏せになっている高杉を抱き起こした。

「おまえも、なっちまってたか……。白詛に。……すまねェ」

「どこ…行ってやがった…?ぶった斬る…とか、言っておきながら……」

「……」

何も言えなかった。
いや、言うことが出来なかった。
高杉は1人、続ける。

「死んだって聞いたが…、生きてたんだな。…それとも、ここは…あの世か?」

「……どっちでもねェよ」

ぽつりと、とても小さく、低い声で言った。

「今の俺は、厭魅そのものなんだよ」

「あ……?」

「俺は死ぬことも、自分を止めることも出来ず、ただ世界が滅びるのを黙って見ていた…。世界やおまえが、こんな風になっちまったのも全部、俺のせいだ……。本当に、すまねェ」

「おまえ…何を、言ってる…?」

高杉が僅かに目を細めた時だった。

「うっ…!ごほっ、ごほっ!!」

「高杉…っ!!」

激しく咳き込み、苦しそうに呼吸をする高杉を見て、銀時は慌てて背中をさする。
と、高杉の手がずり落ちた。
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