短編

□宝石の姫と若き剣士達
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青々と茂る、長い草村をケルディオは駆け抜ける。

「やあっ!!」

大きく跳躍し、草村から出ると、辺りを見回す。

(どこだ…?)

すると、風の音に混じり、ある気配を感じた。

「そこだぁっ!!」

その気配に向かって、蹄から〈ハイドロポンプ〉を放った。
だが、〈ハイドロポンプ〉が命中する前に、一つの影がケルディオの前に現れる。
ビリジオンだった。

「ケルディオ、よく私の気配に気付きましたね」

「草の声を聞いたんだ」

「いいことです」

「僕は草達とも仲良くなった。ビリジオン、勝負だ!」

「ついて来られるのなら」

言うやいなや、ビリジオンは素早く駆け出し、ケルディオは後を追った。
後を追いながら、ケルディオは〈きあいだま〉を放つ。
ビリジオンは走る速度を上げ、難なくかわす。

「くっ…!」

ケルディオは悔しそうに顔を歪め、草村を駆け抜けた。
その先には、湖があった。

「!」

水面から突き出た木の上に、ビリジオンがいた。
ビリジオンはケルディオがやって来るのを見ると、高く跳び、〈マジカルリーフ〉を放った。

「…っ!!」

鋭い葉が、ケルディオや周囲の木々を切り刻む。

「食らえ!」

攻撃を耐えた後、ケルディオは再び〈きあいだま〉を放つ。
すると、ビリジオンは額から、淡い緑色に輝く剣(つるぎ)を出し、〈きあいだま〉を両断した。

「あ…!」

爆発で起こった煙の中から、剣を掲げたビリジオンが現れた。

「剣には…剣だぁっ!!」

ケルディオは対抗しようと、角から剣を出そうとする。
角が一瞬光り、輝く剣が現れそうになるが、光は消えてしまう。
その様子を崖の上から、コバルオンとテラキオン、アブソルの姿のイヴが見下ろしていた。

「あ……」

「どうしました?」

困惑するケルディオに、ビリジオンが訊いた。

「僕の剣は…この角だ!」

ケルディオは叫ぶように言うと、ビリジオンに突進する。
そして、同時に跳躍すると、ビリジオンの剣とケルディオの角がぶつかり合い、大きな衝撃音が響いた。


「もう少しで、剣が使えると思ったのに…!」

戦いの後、ケルディオは悔しそうに言った。

「剣が出そうだったのは確かだし、あと少しって感じだと思うよ」

アブソルイヴは、ケルディオを励ました。

「ほんとにそうかな」

「ケルディオ、剣もそうですが、他の技の鍛錬も怠ってはいけませんよ」

ビリジオンが話に加わってくる。

「〈きあいだま〉の威力は、申し分ありませんでした」

「本当!?」

「はい。剣を出せたら終わりではありません。技や身体を同じように鍛えなければ、聖剣士にはなれませんよ」
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