短編
□宝石の姫と若き剣士達
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「うん!」
ビリジオンの言葉を聞いて、ケルディオは大きく頷いた。
対して、アブソルイヴは僅かに俯き、それにコバルオンだけが気付いた。
「どうした?イヴ」
個別指導中、技を出すアブソルイヴに、コバルオンが問う。
「何がですか?」
「技にキレが無い」
「…そうですか?」
アブソルイヴは突進し、〈アイアンテール〉をぶつける。
が、コバルオンはアブソルイヴの尻尾を〈メタルクロー〉で受け止めた。
「…やはり、キレが無いな」
「くっ…!」
指摘され、アブソルイヴは着地してからコバルオンを見据えた。
「ビリジオンが言っていたことが気になるのか?」
「…!」
「やはりな」
「……」
アブソルイヴは俯き、コバルオンは口を開いた。
「剣を使えないことを恥じるな。種族が違えば、会得する技は違う」
「…解っています。それは」
頭では解っていても、心が納得していない。
アブソルは剣を使うことの出来ない魔獣(まじゅう)。
いや、剣を使えない魔獣の方が圧倒的に多いことは知っている。
「でも私は、あなた方のようになりたいんです!たとえ、聖剣士にはなれなくても…」
「おまえの武器は刃(やいば)だ。我々が剣を武器にするように、おまえは刃を使って戦い、魔獣達を護っていくんだ」
「はい…」
聖剣士達と旅をしてきて、自分も同じように力を使ってきた。
だが、剣を使えない自分では、肩を並べて歩くことは出来ないと、アブソルイヴは思っていた。
「イヴ!コバルオン!」
個別指導が終わり、コバルオンとアブソルイヴは、ビリジオン達の下に戻った。
ケルディオは嬉しそうな顔で、アブソルイヴの前に行く。
「お客さんだよ!イヴに」
「私に?」
「久しぶりね、イヴ」
声を掛けてきた者を見て、アブソルイヴは目を丸くする。
「セレビィ!?」
そこにいたのは、イヴが姉のように慕っている、特殊な力を持つピンクのセレビィだった。
「どうしたの?いつこの世界に来たの?」
「昨日よ。あなた達が、この辺りにいるって聞いたから、来てみたの」
「そうなの…」
「イヴはもう13歳だっけ?暮らしはどう?」
「うーん…まあまあかな」
「そう」
セレビィは、コバルオン達を見る。
「あなた達を見ていれば、イヴがどうしてたかは判るわ。イヴを見ていてくれてありがとう」
セレビィは、聖剣士達とも顔見知りだ。
イヴが魔獣になり、聖剣士達と旅をすることを知ってからは、イヴの面倒を頼んでいた。
「…セレビィ、おまえは今も、イヴを信用しているのか?」
コバルオンは声を潜めて訊いた。
「その様子だと、あなたはまだ、イヴのことを完全に信用してないみたいね」