□助けを求める、僕。
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 ピリリリリリ、と突如鳴り響いた携帯電話の音を消すために急いでポケットに手を突っ込んだ。
 登録している人は数少ない。軍にいる友達基仲間のみだ。
 しかし、画面に映し出された文字はその登録している人ではなかった。

『らぶりぃ束さん♪』

 電話番号はおろか、携帯電話を持っていることすら知らない束さんが、何故僕の番号を知っているのだろう?
 そんなことを思いつつも少しだけ嬉しさもあり、すぐに通話ボタンを押した。

 ――――しかし。

 『ツー……ツー……ツー……』

 いざ出たと思ったら通話終了の音。

「!?」

 手元を確認すると親指が通話終了ボタンを押している。何度見ても変わらない。
 つまりは、自分から通話を切ったということになる。
 絶望したのも束の間。再び携帯電話が震動した。
 画面には先程と同じ文字。ハートマークが語尾に追加され、泣いたフリをした束さんの画像も文字の上に表示されている。
 今度は間違わないように、かつ急いでボタンを押した。

「もしもし‥‥」

『何で切っちゃうのさー‥‥。束さんは悲しいよ!』

 本物の束さんだ。
 ホッとしたのと同時に疑問が口を通った。

「何で僕の電話番号を知っているんですか?」

 すると束さんは驚いたように、

『あれっ!? スルー?! ‥‥まぁいいよ。それしきのことはちょちょいよちょいのちょいだよっ!!』

 本当に束さんならやりかねないと思う僕も僕だ。

「それであの‥‥用件は?」

『特にないよ!』

 強いて言うならゆーちゃんの声が聞きたくて? と束さんは付け足した。
 これはもしかすると電話に出なくてもよかったかもしれない。
 電話しているのは千冬さんの部屋のななめ上だ。バレたらただでは済まないだろう。
 きっと出席簿で‥‥!! 想像しただけで身震いをした。
 そしてすぐに通話修了ボタンを押した。
 危ない、後少しで命を落とすところだった。

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