SHORT

□その先の未来は、
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「…ぁ、あ!アァッ!…まって、まって、まっ…やあっ!!」


欲に揺れる蕩けた琥珀、涙に濡れた睫毛の艶かしさ。普段の一護の立ち振舞いからは想像もつかない媚態。
口付けを繰り返す度に色を増す姿に、そのままその場で性急に一護は抱れた。
でも拒まなかった。
いつ誰が来てもおかしくないのに、声も抑えられず、行為もやめられず。
だってずっと待ってた。触れたかった。
けれど長く触れられることがなかった体が、心がついていけなくて、与えられる過ぎた快感に気が狂いそうになって無意識に白哉の背に爪を立てた。
その仕返しと言わんばかりに喉元をキツク吸い上げられる。


「ふァ、そこっ!…ひぁんッ!ぅあ、あ、」
「…一護、」
「びゃくやぁ…っ、んっ、はぁっ、あうっ」
「私は構わぬが、っ、もう少し抑えねば外へ筒抜けだ。」
「だっ…て、あっ、…うあぁっ!やだやだっ、や!」


抑えたいのだが、一度漏らしてしまえばもう止まれなくて。名前を呼びたくて、呼ばれたくて。
過去に抱き合った頃にも出さなかった様な声がひっきりなしに上がる。
余り聞くことの出来ない一護の矯声は確実に白哉の熱を上げていき、その熱が伝わったかの様に一護の中は白哉を離すまいと締め付ける。


「、そんなに締め付けてくれるな、一護…」
「アッ!」


二人きりの時にしか呼ばれない名前を、重低音でダイレクトに囁かれて更に締め付けてしまう。
それに質量が増したことに感じてしまって足をばたつかせる。


「ゃーっ、っきく、すんなぁっ」
「ムリを言うな。…さて、そろそろ終いにせねば…時間がない。」
「っ、!?ああっ!ん、ん、んーっ、白、哉ッ、びゃくやっ!…ぁッ。も、イクっ!」
「…っ、」


結局最後まで声を抑えることが出来ず、その場で三回交わってしまった。
見たことのない一護の乱れ様と素直に感じる姿にまだ足りない顔をした白哉だが、これ以上仕事を放棄するわけにはいかず渋々体を離した。
白哉が抜け出ることにも感じてしまって、体に力が入らずにいると手早く後処理が済まされる。
しかし問題は胎内に放たれたものをどうするかで。
今出せる分だけ掻き出すからそのまま屋敷へ行って風呂に入れと言われた。
しかし風呂には入りたいが、如何せん足腰が立たないため暫くこの部屋に留まることになった。


++++++


掻き出される行為にも危うく熱が上がりかけたが、どうにか耐えてソファーに沈む。
ほぅ、と一つ溜め息を吐いた時、先程の己の失態をまざまざと思い出してしまって激しい後悔に見舞われる。
耐え難い羞恥にあーだのうーだのと唸っていると、何事だと白哉の視線が訴える。


「サイアクだ…ありえねぇ…も、どんな顔して過ごしゃいいんだ…」


真っ赤になって腕で顔を覆ったまま喋る一護に、普段通りでいいだろうとしれっとした答えが返ってきた。


「どう考えてもムリだろ!…あーもー今なら恥ずかしくて死ねる…」


どうしよう、と頭を抱える一護に、本当に聞こえていたか恋次が来ればわかるだろうとフォローにもならない言葉が返って来と、タイミング良く恋次が書類を持ってやって来た。
ノックと扉の向こうから掛かる声にびくりと肩をすくませる一護を尻目に入室を促す。
その時の白哉の表情はどことなく楽しんでいる様だったが、尚も唸る一護には見えていなかった。


「失礼しま…って一護!?いつこっち来てたんだよ?」
「え!?あ、いや…」
「つーか何寛いでんだよコラ」
「あー…ぅ゛ー」
「あ?さっきっから何唸ってんだよオメー。あ、隊長、コレ急ぎでお願いします!しかし、なんでさっき結界なんか張ってたんすか?」
「結界!?…いでっ!」
「おぉ!?驚かすなよ!つか何で落ちてんだよ…」


そう、実は白哉が隊主室に結界を張って他人を近づけない様にしていたのだ。
よって、中で何が行われていたかなんて誰も知るはずがなく、一護が一人慌てる様を見て白哉が楽しんでいたのだ。
驚き過ぎてソファーから転げ落ちたものの力が入らずに立ち上がれず、どうにか上体を起こしたままで口をぱくぱくさせている一護に白哉がフッとからかうように笑って見せた。


「なんっ…けっ、はぁ!?」
「『何故、いつ結界を張ったのか』と聞きたいのか?」


パニックになって正しく話せなくなっている一護の言葉を的確に理解してみせた白哉にブンブンと音がしそうなくらい強く頷く一護に、私がその様な下らぬ失態をおかす訳がなかろうと、さらりと返されて床に沈む一護。今まで散々悩んでいたことは何だったのか。体力も使って精神力も使って、短時間で物凄い疲労を感じて最早起き上がろうとも思えない。
そんな二人の様子を見ていた恋次は話について行けず頭にクエスチョンマークを飛ばすばかりだが、中々起き上がらない一護に手を貸すために近付こうとしたがそれより早く執務机を離れた白哉に阻止された。
そしてあろうことか、あの白哉が一護を抱き上げてソファーに戻してやっているではないか。
目の前で行われていることは夢なんじゃないかと思えるくらい自然な動作だった。
この二人に、一体何が…。


「全く。どうして兄はこうも落ち着きがないのだ。」
「こ、これが落ち着いてられるか!俺あんなに悩んだのに!」
「それは御苦労な事だ。」
「これっぽっちも思ってねーだろそんなこと!もーホントにありえねぇ!!」


それは先程も聞いた、と一護の叫びを交わしながら何事もなかったかの様に書類に目を通しだした白哉を真っ赤になって睨む一護。
朱が滲むその目尻に、何だか色気を感じてゴクリと恋次が唾を飲んだ。
よくよく見てみれば、今日の一護は艶があるように思える。それも、情事後のような気だるさを纏った色気だ。
思わず凝視していると、横から冷ややかな視線を感じてそちらに向き直ると無言で書類を突き返された。





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