SHORT

□その先の未来は、
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(何でオレは睨まれてるんだ!?)


心も体も冷や汗が止まらない恋次は視線を泳がせながら書類を受け取る。
恐ろしい白哉の視線から逃れるために少しずつ体をずらしていく。
すると、ソファーに突っ伏して未だに項垂れる一護の首筋が目に入る。
そこにあるぽつりとした赤に目がいった。
虫刺されか?そう思って一護に声を掛けると、がばっとそこを抑えて真っ赤になる。視線はあちこちを泳いでいるが必死に何でもないを繰り返す。その慌てように、先程の赤の正体に行き着く。もしかしてあれは現世で言う…


「キスマーク?」
「っっっ!!」


思わず呟いてしまった単語に、更に真っ赤になって反応した一護に、今度は恋次の言葉が出ない。
一護に彼女がいたなんて…しかし、彼女がつけるにしては些か不自然な場所のような気がする。喉元なら素直に頷けるが、裏首の真ん中あたりは丸で背後からのし掛かられたような位置だ。
ん?いや待てよ。先程の結界、立ち上がれない一護、そして裏首の所有印。
これはまさか…


「まさか…お前と隊長が…!?」


ついに言われてしまった白哉と一護の関係を決定付ける一言に、一護は増々縮こまる。
首を抑えて真っ赤になって縮こまる姿に、どこの生娘かと問いたくなる程だ。


「一体いつから…全く気付かなかったぜ…」
「あーもー…バレないようにしてたのに…白哉のバカ」
「…先に仕掛けて来たのは兄であろう。」
「んな?!し、仕掛けてなんかねぇ!」
「ほう?口付けて…」
「わー!わー!わー!わー!…ぅいで!」


白哉の言葉を遮ろうと大声を出して力が入らない事を忘れて身を乗り出し、再び派手に床に転げ落ちた。
何故だか残念そうな悲しそうな奇妙な表情で自分を見つめる恋次を無視して立ち上がろうと試みる。が、その拍子に胎内に残っていた白哉の名残が内股を伝う感覚に声が出てしまった。


「…ふぁ?!」


まだ体が敏感でつい反応してしまったことに慌てて口を塞ぐ。
白哉を見れば普段通りの表情だが、一護にとっては意地の悪い顔をしているようにしか見えないし、恋次を見れば一護の声に顔を赤くしながらも何が起きたのかという顔をしている。くそ。今すぐ殴りに行けないのが悔しい。
しかしそれよりも、今この状況をどうするかが問題だ。
その場に踞りながら体が落ち着くのを待つしかないと目を瞑って耐えていると、ふわりと体が浮いた。


「!?」
「恋次。書類が仕上がり次第呼ぶ故、他の仕事にかかれ。…耐えられるならばそこに居るが良い。」
「は?」


とことんついて行けてない恋次をその場に残し、隣の部屋へと去って行く白哉。
扉が閉まると一護の焦った声が聞こえてぎょっとする。


『な、何してんだよ!?』
『残りも出さねば腹を下すぞ。』
『そっ、じ、自分で出来る!』
『それで以前も腹を下したのはどこのどいつだ。』
『ぅ、それは…ってほんとやめっ…アッ!?』
『さて、黙らねば全て聞かれるぞ。』
『〜〜〜っくっ、そっ!ん、ぅ…、っ』


(残りって何だよ、出すって何だよ、聞かれるって何をだよ!?)


聞こえて来る声が段々と色を含んだものに変わったことに気付いた恋次は、そこかしこに体をぶつけながら大慌てで退室した。
かなり大きな物音を立てて出て行ったにも関わらず、声を出すまいと必死な一護は結局最後まで気付かなかった。
その後、出来上がった書類を取りに来た恋次は怒った一護の霊圧でビリビリとした隊主室で息苦しさと気まずさを抱えたまま業務をこなしたそうな。丸で生きた心地がしなかったとルキアに愚痴をこぼしたかったが、不覚にも一護の声に反応してしまったため言えなかった。


++++++


一方の一護は結局何だかんだで白哉の終業まで隊主室に居座り、ルキアの強い要望もあって共に朽木邸へと帰宅した。
力を無くす以前、一護の滞在時は一護が食事を作るとルキアと約束をしていたが、力を取り戻した今も変わらずに約束が守られ、今日も一護が腕を奮った。
久々の一護の手料理とあって、ルキアからあれこれと注文されたものを作っていると到底三人では食べきれない量になってしまい、残りは以前も良くしてくれた朽木家の使用人達に振る舞ったらいたく感動され、その様子に戸惑いながらもぎこちなく笑みを返した一護は照れながらもいつも迎えてくれてありがとうと伝えると、涙を流す者もいた。




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