SHORT

□ミスター
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「…ァッ、ふぁ……っ」
「そんなに息詰めないで…。聞かせて下サイ」
「んッ、ム、リ、……ぅあっ!」
「っ、そうっスか。」



―――聞かせろ、なんて。嘘、つくなよ。
アンタはそんな関係望んでないはずだ。







ミスター








「ちはー」


ルキアに頼まれていた物を受け取りに浦原商店に足を踏み入れた一護。
がしかし、珍しく子供達の声も大柄な男からの返答もない。
誰も居ないのか…?しかしシャッターは開いている。
再び声を掛けようと口を開いた時。


「おや、黒崎殿。いつの間に?」
「あ、テッサイさん居たんか。今来たとこなんだけどよ、返事ないから誰も居ないのかと思って。」


どうやら店内に居たらしい。
体格に似合わず丁寧な仕草で奥からテッサイが現れた。


「そうでしたか。それは大変失礼を。店長にご用事ですかな?」
「おう、ルキアが浦原さんに何か頼んでたらしいんだけど…」
「左様で。しかし、その朽木殿は…」
「野暮用が出来たとか言って代わりに取りに行けって押し付けられた。」
「そうでしたか。ではお上がり下さい。只今店長を呼んで参ります故…」
「その必要はないっスよん」


一護の背後から、明らかに起き抜けであろうこの店の店主、浦原の声が降ってきた。


「おや店長。おはようございます。」
「おはよ、テッサイ。」
「アンタ今起きたのかよ。相変わらず体内時計狂ってんな。」


急に掛けられた声にドキリとしつつ、定着した眉間のシワをそのままに浦原を振り替えって声を掛けた。


「いやあ、ちょっと色々手をつけ始めたらあっと言う間に陽が昇っちゃいまして。」
「その色々に手つける前に自分の体に頓着持てよ。」


呆れ顔でそう返してやれば、黒崎サンお母さんみたいと返されたのでアホかと返してやった。


「それで、今日は何用で?」


掛けられた問いに、あ、と思い出し、用件を伝える。


「ルキアがアンタに頼んだもん受け取りに来たんだけどよ。」


用件を伝えればああ、と納得したように再び奥へ戻って行った。
それと入れ替わるようにしてジン太とウルルが帰宅した。


「ただいまー!テッサイさーん買って来たぜー!…ってオレンジ頭来てたのか。」
「ただいまです…黒崎さんこんにちは」
「ジン太てめぇ…ウルルお帰り。邪魔してるぜ。買い物か?」
「はい、お夕飯の買い出しです。」


へにゃり、と笑って返事をしたウルル。
一護より遥かに長く生きているのかもしれないが、どうにも自分の妹達と被り、そっか、と笑いかけてつい頭を撫でてしまうとほんのり赤くなるウルル。


「あら黒崎サン、うちの子までたぶらかさないで下サイね。」

「……俺がいつたぶらかしたよ。つか、背後から急に声かけんな。」
「アタシは特に霊圧消してませんけどー?」
「…、悪かったな。どうせ霊圧探査能力低いよ!」
「そこまで言ってないじゃないっスか。まあ否定もしませんが。」
「アンタほんと腹立つな。」
「ダセーなオレンジ頭!」
「うるせーぞちびっこ!」
「何だと!?」
「皆様、お茶が入りましたぞ。」


ジン太が立ち上がり、一護も前のめりになると、絶妙のタイミングでティータイムと言う名の静止の声がかかる。


「あ、わりぃなテッサイさん」
「とんでもございません。本日は紅茶にスコーンと、所謂定番と言うものの組み合わせにしてみましたが…いかがですかな?」
「うわ、相変わらずスゲーな、うまそう!」
「…黒崎サンの本来の目的はアタシが持ってきたこっちデショ。」
「……いいじゃねーかうまそうなんだから。」


むすり、とバツが悪そうに返すとクスリと意地悪く笑われる。
浦原の表情の変化はどうにも心臓に悪くてさりげなく顔を反らす。
いつからだろう、浦原を好きだと思うようになったのは。
浦原と関係を持ったのは、ルキアを助けに行く前のレッスン最後の日。
久方ぶりに剣を抜いた浦原と、それに全力でぶつかっていった一護。
お互いどうしようもなく気が高ぶり眠れず、体を重ねてしまい、そんな関係がずるずると続いていた。
薄暗い思考の淵をさ迷っていると、非難じみた子供の声にハッと意識を戻される。


「何、どうしたんだよ」
「は、それが只今店長より使いを賜りまして、これからそちらに出向くことになったのですが…」
「今日リクエストしたもん作ってもらえなくなったって話だよ。」




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