SHORT

□海月と月と太陽と
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目は口ほどに物を言うと言うが、この少年もそれに該当するだろう。普段ならば。
その少年の視線はある一点、浦原へと向けられている。正確に言うと浦原の頭部。
え、もしかして禿げてる?おっかしいなこの間メンテナンスしたばかりなのに…
デリケートな悩みではあるが、義骸なので禿げてるなんてことはありえない。しかも自分はいつもの帽子を被っているだとしたらこの少年は何故自分の頭部を凝視するのだろうか。


「あの、黒崎サン?」
「何だよ?」
「アタシの頭、何かついてます?」
「髪の毛が生えてて帽子被ってんな」
「…なら、一体何だってんです?」


尚も凝視する子供に尋ねてもはぐらかされるばかりで些か面白くない。やっと手に入ったこの子供を、自分は構い倒したくて仕方ないと言うのに。余りに熱心に見詰めてくれるから悪戯してやりたくなって、ソロリと身を乗り出して緩く結ばれた唇へ口付けた。途端にびくりと肩を跳ねさせて後ずさろうとする後頭部を掴んでキスを深くした。
温かい唇が心地好くて舐めたり食んだりを繰り返すと、一護はくすぐったさに身を捩ってキスから逃れようとするが、そのまま覆い被さって畳へ縫い付けて逃げられないようにした。
最初は突っぱねる様に抵抗していた一護の腕も、いつしか浦原の羽織を握りしめていて、鼻にかかる声が艶を帯びてきているのに意地悪く金色の瞳を光らせてその細い腰を撫で付けた。
腰がビクリと跳ねたことにニヤリと笑って太腿と足の付け根を撫でると、再び抵抗し始める一護をものともせずに成長途中の肢体を好き勝手にまさぐる。
キスと愛撫に一護の息は散々乱されて瞳も潤んでいた。とろりと蜜でも滴らせそうに甘い色合いの目尻にキスを一つ落とすとやめろ、と掠れた声が聞こえた。


「だぁってキミ、ウチに来てからアタシの頭しか見てないじゃない」
「それ、は、そうだけど…」
「少しくらいアタシに構ってくれてもいいじゃないっスか」
「構うって…」


犬や猫じゃねぇんだから、と話す一護の首筋に顔を埋めて耳裏に舌を這わせた後、赤く染まった耳朶を甘噛みする。ゃ、と細く上がった声にもう少し強く噛んで舐め上げた。更に赤くなった耳朶を口に含んでキツ目に吸い付くと薄らと所有印がつく。普段から所有印を残すと酷く恥ずかしがるこの子供が見たらきっと顔を真っ赤にして怒るんだろうな、と細く笑むとその男にしてはきめ細かい、けれども所々に傷痕のある肌に溺れていった。


++++++


「っぁ、あ!…ぅあ、ンッ、ふうっ…」


腿を掴んで脚を高く上げさせてより深くへと侵入すれば、圧迫される息苦しさに一護が頭を振った。逃げようとする腰をもう片方の手で押さえ付けて引き寄せれば面白いくらいに一護の脚が跳ねる。


「ヤッ…ぅら、はらっ…あっあっ、ハ、」


苦しい、やめて、闘いの最中は一度だって吐かないようなセリフを、浦原との行為の最中は意図も簡単に吐き出す。そしてそうなるように仕向けているのが自身だという事に自然と口角が上がるのは否めない。何て優越感なのだろうか。いつだって家族か仲間の名前を真っ先に発する口は今は浦原の名前しか呼ばないし、愛刀握る掌はすがる様に浦原の背に回されてその痕跡を残すし、曇る事を知らない瞳は浦原の与える熱で蕩け切っている。
そして普段は帽子に隠されている浦原の髪に一護の手が伸ばされてくしゃりと掴まれる。そのまま掻き上げられて浦原の額が露になるが、そんなことはお構い無しに一護は浦原の髪に触れ続ける。
一つ穿たれて浦原の髪を掴む。
一つ穿たれて浦原の髪を抵抗するように後ろに引っ張る。
一つ穿たれて浦原の髪を掻き混ぜる。
一つ穿たれて浦原の髪を己の方へと引き寄せる。
引力に逆らわず浦原が一護に口付ければ、深く侵入されたことの快感と口を塞がれたことの息苦しさで浦原の髪に一護がすがった。
迎えた絶頂に一護は意識を手放したが、最後まで名残惜しそうに浦原の髪に触れていた。




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