01/24の日記

01:16
小ネタ
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1.誰にでもスキだらけ(浦一)


だからホラ、言わんこっちゃない。

妹達にどやされたくないからと、泥まみれでやって来た子供は擦り傷や打撲にもまみれていた。
これは確実に双子の妹の片割れに大目玉を食らうであろうというくらいの小汚さだ。大袈裟ではないにしろ、満身創痍なその風体につい眉を潜めてしまった。
原因を問えば言い辛そうに口ごもり、渋々口を開いた。
曰く、如何にも頭の悪そうな集団に小学生がぶつかってしまい、絡まれていたので助けようとしたところ、逃げるどころか一護にしがみついて離れようとしない子供に満足に動けずこの有様だと言う。たかが子供一人にしがみつかれたくらいで、と呟けば二人だ!と小さな反論を食らったのであえてスルーして溜め息吐いた。その溜め息をどう捉えたのかバツが悪そうに悪かったな、と踵を返そうとする橙色の首根っこを掴んで自室へ引きずり込んだ。

バレたくないと言うので致仕方なしに鬼道で治療することに。治療の最中、共に無言だったが子供は始終居心地が悪そうにそわそわと視線を彷徨わせていたことに小さく苛立ちが募る。
何がそんなに落ち着かないというのだ。何のためにここへ来たのかと言う疑問も後を絶たない。
ああ、苛つく。
一層、こんな小さな傷なんぞわからないくらい切り裂いてくれようか。
こんな痣なんぞ気にもならないくらいに鬱血痕を残してくれようか。
自分を映さぬ瞳など抉り出してくれようか。
いつの間にか独占欲の塊と化した己の思考に嘲笑が滲む。浦原の苦笑いに気付いた一護が何笑ってんだよ、と口を開いたのを噛み付くように口付けて塞いだ。
身体についた傷の方が酷かったので切れた口元の治療は後回しにしていたから、口付けた拍子にまた少し傷が開いたらしく鉄臭さが互いの口内に広がった。突然の口付けと傷口を抉られた痛みに一護の顔が歪むのをさも楽し気に見下した。それに負けじと一護も睨む。
フ、と笑んでほんの少し唇を離して血の滲むそこを舌先で血を啜りながらグリグリと抉ってやる。途端、激痛に目を見開いて暴れ出した身体を抑え込んで押し倒して更にグリグリと抉る。

「いっ…、…ゃっ、やめ…!」

ぐちゅっ、と濡れた音と共に舌を離してやれば涙目になりながも噛み付く子供。

「…っにすん…あ、れ?」

何すんだよ、となるはずだった言葉は途切れて疑問符が上がる。だって、痛く…ない…?
え?あれ?と口端を触って確かめるも、痛くない、し、血もついていない。まさか、と浦原を見やればニヤリといやらしい笑を浮かべて一護を見ていた。そう、舌先で散々抉りながらも傷口を塞いでいたのだった。何かもう、感謝すればいいやら罵りたいやらで言葉が出てこない。ガックリと項垂れた一護をクツクツと浦原が笑う。のを、睨む一護。恨めしい視線をひたすら投げかければ、だあって、と浦原が口を開く。

「アタシが付けたワケじゃない傷で君の気が逸れるなんて許せるワケないじゃない。」

さも当然の様に言い放つこの男は、笑ってるかと思いきやとてつもなく冷めた瞳をしていた。一瞬ゾクリと背筋に寒気が走るも、これは男の独占欲なのだと気付く。そして結構…怒っている。うっ、と息につまって浦原を上目遣いに見やれば見下される。キミはいつだって隙だらけだ。そう視線で物語る男の機嫌を直さなければこのまま無事に帰れそうにない。
見つめる視線はそのままに、若干困り顔でそろりと近付く。その表情が男の劣情を酷く煽るとも知らずに。ザラリとした感触の、無精髭の生えた頬を指の背で撫でて両頬を自分のそれで包む。少し目を伏せて舌先で温度の低い唇をぺろりと一舐めして小さくゴメンと呟けばあっと言う間に頭を抱え込まれて最初から深い口付けを施された。何だか納得いかない部分もあったが、浦原がムキになるところなんて滅多に気付けないから黙って口付けを受けた。

なあ、誰にだって隙だらけってアンタ言ったけど、好きだらけになるのは、アンタにだけ…なんだよ。




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