summer wars!!

□第6章
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佳主馬「冬希、またパソコン忘れてる…。」
届けに行こ…。






こんこん…

健二「冬希ちゃん?」

冬希「…お婿兄さん?おばあちゃんといたの?」

健二は頷いた。

健二「おばあちゃんが、呼んでるよ。」

冬希の部屋は隣だった。

冬希「ちょっと、入って。」

健二は冬希の部屋の中に入る

佳主馬「お兄さん…?」

気になった佳主馬は冬希の部屋の外側の壁に寄っ掛かった。

冬希「おばあちゃんと、何か話した?」

健二「…夏希先輩のことを…」
冬希「頼まれたんだね。」

健二「…う、うん。」

冬希「嬉しい。」

健二「え?」

冬希「ここ、陣内家にも兄のような存在はいるんだけどね、紫蓬院家にも、あたしの兄はいた。でも、あたしの兄は10年前、丁度お婿兄さんと同じ歳に……」

冬希は黙った。
この先を言うと、また涙が出てしまうからだ。

健二「10年前に、父と母を亡くしたそうだね…。」

冬希「うん…。さっき、おばあちゃんが侘助おじさんに言った言葉、同じだったの。あの時と…。」

健二「同じ言葉…?」

冬希「今此処で死ね…。その言葉。」

健二「……。」

冬希「…あたしの兄はね、」

冬希は言葉が詰まった。代わりに涙が出た。

健二は、ベッドに座って俯いている冬希の前に膝を突いた。

そして心配そうに手を握り、冬希を見上げた。

冬希「兄は…いつもあたしと遊んでくれたり、あたしが泣いたときは励ましてくれたり…凄く優しいお兄さんだった…


なのに……なのに…!10年前兄は、父と母を殺した!!」

健二「!!!!」

佳主馬「!!!?」

佳主馬は勢いで冬希の部屋に入りそうになった。
だが、自分が行っても邪魔なだけだと思い、心を抑えた


冬希「それから、兄が目覚めたかのように震え始めた。ナイフを落として、叫びながら紫蓬院家のビルの屋上に上っていった。あたしは理由を知りたくて必死に追い掛けた。

屋上に着いて、兄はフェンスを超えた。名前を呼んだら、来るなって言われて…。

「なんで…なんで父と母を!?」

「………」


答えてはくれなかった。

「一人にしないで!一人嫌だよ、お兄ちゃん!!」

「罪償いだ!絶対に来るな、冬希!」


兄が振り向いたとき、泣いていた。

「ごめんな、冬希。こんな兄だったけど、どうか許してくれ…。御前の、立派なピアニストになる姿を見たかった…。御前を守る、俺の弟になる人をみたかった…。大きく…なれよ…。」

「お兄ちゃぁぁぁぁぁん!!!!」


……自殺した。罪償いで。」

健二「そんな…」

冬希「でも兄は、さよならは言わなかった。というより、絶対に言わない。」

健二「…?」

冬希「…悲しくなるから。」

暫く沈黙が続いた。

こんな話、聞いて良かったのか。

佳主馬「………」
パソコンは、明日渡そう…。

佳主馬は納戸に戻った。


健二「冬希ちゃんは、本当におばあちゃんが大好きなんだね。」

冬希「え…?」

健二「だって、おばあちゃんの言葉で嫌な思い出が蘇っても、決しておばあちゃんを責めたりしない。」

冬希「あ…当たり前だ!!だって、あの人は…あたしの人生を、全て変えてくれた大切な人だもん!責めるわけがない!」

健二「そうだよね。じゃあ、僕は行くね。」

冬希「お婿兄さん…」

健二「どうしたの?」

冬希「ありがとう。」

健二は笑顔で答えた。

健二「どういたしまして。早く、おばあちゃんの所に行きな?」

冬希「……行きたくない…。」

健二「……でも…」

冬希「………」

健二は何も言わず、部屋を出ていった。
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