BLEACH

□はじめまして、愛しい人
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かつん、かつん。

無間の暗闇で、硬いものー靴の爪先ーが床とぶつかる音がする。

それが自分のものだと分かっていても、何故か腹立たしく思えて藍染は足を止めた。

ふう、と小さく溜め息が漏れた。

拘束されているため身体は動かせないが、足先くらいは動かせる。

爪先でまた一定のテンポを刻みながら藍染は考えていた。


この気持ちは 何なのだ


黒崎一護との戦いに敗れてここに封印されてから藍染は理解できない感情に襲われていた。

己こそが天に立つべき存在だと信じていた。それは今も変わらない。

しかし、黒崎一護から始まる死神たちに己の計画は阻まれた。

そして浦原喜助によって封印された後、微かに聞こえてきたのは、

「藍染の剣には、孤独しか無かった」
「アイツは多分ーー」

と呟いた、少年の、声。


ああ ここに いたのか


ずっと探し求めていた。
でも、あまりに長い年月を過ごして諦めていた、

己の、理解者。

太陽の色の髪をした少年。
彼のことは生まれる前から知っていたけれど、人間性を見たことは殆ど無かった。

仲間を護りたいと誰よりも強く想い、誰よりも強く輝く少年。
そう、まるで太陽のように。


しかし、まさか己にまでその輝きを向けられるとは思っておらず、だからこそ藍染は胸に湧き起こる感情が理解できない。


もっと早く、もっと違う形で、彼に、出逢えていたなら


と、後悔とも憤りとも取れる感情と、


私の孤独を理解したか


と、恐らく喜びであろう感情と。


これらの感情は日増しに強くなり、そしてそれは

「彼に、逢いたい」

という結論に行き着いた。
何度考え直しても、この結論は変わらなくて。

ここまで激しい「感情」に戸惑いつつも、決して不快には思わない自分に藍染は苦笑した。

「……どうやら、私にも感情というものはあったようだ」

藍染の苦笑混じりの呟きは暗闇に呑み込まれていく。

「待っていたまえ」

しかし、藍染の意志は暗闇に呑まれることは無かった。

「私の、太陽」



ーはじめまして、愛しい人

 

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