転生した彼の学園モノ。改

□1章:入学&試験4
1ページ/5ページ


 共闘した後、白髪のフェルパー『あんず』と銃使いのヒューマン『彩(さや)』と『合流』するということになった。

 そして、その日の夜は『飢渇之土俵』の砂漠に多々ある岩場の近くで野宿することになった。
 夕ご飯として出したのはこちらが持って来た携帯食料の『干し肉』。どうやら、あんずと彩の二人は着の身着のまま飛び出したそうなので、それほど道具や食料を持ってきていなかったようだ。

「腕っ節はいいけれども、突飛な行動をしすぎだ…。」
「…悪いとは思ってるわよ…。」
「うう、…すみません…。」

 少々呆れたような物言いになってしまったが、体育座りをしているあんずは拗ねた様に言い、彩は申し訳なく小さくなりながら『干し肉』を口に運んだ。

 それほど量がない食事を終えると、シオと彩の二人は疲れがでたのか直ぐに寝てしまった。そんな二人に毛布をかけてやり、あんずと二人で火の番をすることにした。

 火の番といっても薪を燃やしているわけではなく特殊な結晶を用いた焚き火をしている。そもそも薪を使おうにも『飢渇之土俵』に木が存在していないのだから薪は使えない。

 熟睡している二人の規則正しい寝息を聞きながら、荷物の中に入っているまだ何も書かれていない無地の巻物を取り出す。その巻物に今日倒したモノノケの名前と数をメモ帳を見ながら書き込んでいく。

「…何をやっているの?」

 暗い、焚き火の明かりしかない夜の中二人きりの状況で会話がなく無音だったのが寂しく感じたのか。はたまた、純粋に何をやっているのか気になっただけなのか分からないがこちらに問いかけてきた。

「何を、と言われてもな。今日の戦闘で倒したモノノケの数を記録しているのだけれども?」
「……何故?」

 自分としては至極当たり前のこと言ったつもりなのだが、あんずにはどうして記録しているのか分からないのか首を傾げてこちらを見ている。
 なるほど、あんずも『知らない』口なのだろう。

「一から全てを教えるのもあれだしな。」
「?」
「まず、学科の単位を得るためにはどうすればいい?」
「モノノケを倒して『履修』を得ればいいんでしょ?」
「そうだ。」

 何を当たり前のことを、とでも言いたい感じなあんず。

 学科には単位があるが、その単位を得るためにはまず『履修』を得なければならない。そして。その『履修』を得るためにはあんずの言った通りモノノケを倒さなければならない。

 ここで注意しなければならないのは座学の授業を幾ら受けようとも、この『履修』は得られないということだ。

「なら教師はどうやってその生徒が倒したモノノケの数を把握して『履修』を与えるんだ?」
「…生徒による自己申告……そういうことね。」

 先程の俺の行動と発言で推理し、納得できたのか腕に頭を預けてため息を漏らす。

 この自己申告だが、実は図書館に調べものをするときに出会った、図書委員の先輩から教えてもらったことだ。先輩もその前の先輩に教えてもらったらしいのだが、毎年この自己申告制のことを知らずに『履修』を逃している生徒が多いそうだ。

 ならば何故自己申告制のことを教師陣が言わなかったのか。それは『意欲』『関心』などを試すものらしい。先輩から言われたことだがこの自己申告制のことは大っぴらに教えてはいけないらしく口止めされている。そういう俺も口止めされている。

 そうした事情もあり、試験の前に図書館へと行った者のみが知ることができる事実である。試験が終わった後日に教えられてブーイングの嵐が巻き起こるのも毎年のことらしい。

「この試験だけでも1、2単位ぐらい得られるらしいからな。記録しておいて損はないだろう。」
「そうね。なら私も…。」

 あんずも記録することにしたのか自分の荷物を探り始めたが、ほぼ着の身着のまま飛び出したせいで巻物やら筆など持っておらずガックリと肩を下ろした。流石にそんな姿を見るに耐えないので、新品の巻物に筆、硯を投げて寄こした。一瞬キョトンとしたあんずだが慌てて受け取ると礼を言い、書き始めた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ