main(パラレル)
□冬のはじまり
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俺達の待ち合わせは校門の前。
いつも先に部活が終わるあいつが俺が着く前にそこで待っている。
11月ももう終わり。
来週からは期末試験が始まる。
確かに部室を出ると、この前まではまだ明るかったはずが真っ暗になっている。
いつも気にも留めていなかった周りの景色に目を向けてみると、
部活動を終えて帰ってくる奴らの格好がジャージを着ていたり、
帰宅する奴らはマフラーを巻いている。
「お疲れさまです、ゾロ先輩!」
挨拶してくる後輩らに答えながら校門を目指す。
俺は滅多に自分から話さねぇから二人で帰っててもあいつの話を聞くだけだ。
それはあいつは話をするときにコロコロ表情を変えるから飽きないし、そんなお前の邪魔をしたくないからってのもある。
校門近くに行くと、あいつの後ろ姿が見えた。
赤いマフラーに顔を埋めて、手をこすってるあいつは見るからに寒そうで。
俺は近くの自動販に向かう。
「あ、ゾロ!」
俺の姿を見て近寄ってくるお前に
「これ、左手で持て。」
「え? 」
「行くぞ。」
そう言ってお前の冷えきってかじかんだ右手を握る。
「ゾロらしいね、緑茶(笑)」
「///何がいいのかわからなかったんだよ。」
「好きだよ、緑茶。
だって…ゾロの髪色と一緒だもん。」
そう言った後、必ずお前は照れて下を向くんだ。
「バカヤロー…」
お前の手を握る度に思うんだ。
(このまま、時が止まれば…)
って。
下から伺いながら俺の顔を見てくるお前に
「何もねぇよ。」
って笑って答える。
ーあれから5年経った。
あいつはあの頃と何も変わっていないと俺は思う。
あいつは俺に過保護になったと笑って言う。
だけど、どんどん綺麗になっていくお前に時々柄にもなく心配になるんだ。
俺達の今の待ち合わせも校門前。
「あ、ゾロ!」
そう言って近付いてくるお前に
「これ左手につけろ。」
「え、」
「行くぞ。」
「…何指に付ければいいの?」
「貸してみろ。」
そうして俺はお前のまた冷えきってる手を取って薬指に付ける。
「…行くぞ。」
「……は、い。」
そうして俺らはまた歩き出す。
Fin