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□休みます。(雪燐)
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「すみません。ええ、・・・・はい、奥村の兄です。燐は今日一日中休ませます。・・・・はい、ご不便おかけします。・・・・ええ、では失礼します。」
ピッ、
無機質な携帯の音が部屋に響く。
「ゆき、お・・・・?」
「目が覚めたみたいだね、兄さん。ところで今どんな状況か分かってる?」
雪男が自分の顔をのぞいてくる。
「・・・・あ?・・・なんだ、これ。」
「これ。・・・飲んだでしょう。」
雪男が目の前に茶色の小瓶を揺らめかす。
「・・・・」
「いま、ヤバイ、って顔したよね。」
「・・・・いや、てっきり、その。土産か何か菓子かと思って。」
雪男は溜息をつくと、ベッドの脇に腰掛ける。
「子供じゃないんだから。それに、僕は今朝任務で遅くなるから先に学校は行っててって、言ったよね?」
「うっ・・・。すんません」
「まあ、手間がはぶけて好都合、・・・なんだけどね」
ボソッと呟いた声はよく耳に聞こえなかった。
「それより雪男、それなんだったんだ?なんかものすごく甘くて飲んだ瞬間ぶっ倒れたんだけど。」
「・・・・。」
「雪男?」
「身体。熱くない?」
「へ?」
はあーっと溜息をつき、雪男は制服のネクタイを緩める。
ブレザーをクローゼットのハンガーに掛け、再びベッドに戻ってくる。
「何、してんだ雪男。学校行かなくていいのか。」
「そんな姿の兄さんほっといて出ていける訳ないでしょ。それとも兄さん自分で気づいてないのかい?いくら半分は悪魔だからって、コレが効かない訳ないんだけど。」
だんだん雪男の言っている意味が分かってきた。
自分が飲んでしまったものは、
とりあえず大変な物らしい。
なんだか身体が熱いし、風邪みたいに頭がグラグラする。
顔がやたらと火照るし、雪男の言っていることも頭の中で反響して訳が分からなくなってきた。
「うあ・・・なんかマジでやべぇ。風邪か?」
「・・・・・」
雪男は何も答えない。
相当怒っているのだろうか。
もしかして、小瓶の中のものはもの凄く高い薬瓶だったとか。
俺は気怠い身体を起こしてベッド脇にいる雪男の袖を掴み、謝った。先手必勝ってヤツである。
「なあ、・・・雪男。悪かったって!!俺、何でもする、から!」
「兄さんからそういってくれると、手間が省けて嬉しいよ。」
「ははっ、じゃあ、家事でもして・・・」
「それなら遠慮なく頂きます。」
「は?」
不敵な笑みを雪男が浮かべたと同時に。
視界が逆転した。