Dream-INFINITE-
□片思い
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「出席とりまーす!」
笑顔で教壇に立つ、先生。
チャラそうに見えて、絶対生徒にため口を使わない。
「ー…さん!―…君!イさん!」
「いませーん」
「またですか?」
「はーい」
「なんで来ないんですかねー…」
先生は鼻の下と唇でペンを挟むのが癖。
「先生〜!今返信来て、今学校に着くみたいでーす」
「バロ君、ありがとうございます^^」
「いーえ!」
「じゃあ、今日も一日頑張ってくださいねー^^」
笑顔のまま教室を出る先生。。
「ナム先生、おはよー!」
「おはようございます^^」
先生のことをウヒョン先生、と呼ぶと凄く嫌がる。
皆ナム先生と呼ぶ。
先生も生徒を名前では呼ばず、苗字に君、さん付けをする。
距離があるような、ないような。
「おはようございます^^」
「…おはようございます」
「何で、いっつもSHRに出ないんですか?」
「必要性を感じないからです」
そう言ってシンチェは、先生と目を合わさずに横を通りすぎる。
「ちょっ…」
そんなシンチェの腕を先生は掴む。
「離してください」
「このままだと留年しますよ?受験生だし…」
「大丈夫です。早く離してください」
シンチェは手を振り払う。
「はぁ…」
「それじゃあ」
シンチェは教室に向かう。
「…………………………」
まだ、掴まれたところが熱い。
SHRに出ないのは、先生を見たくないから。
見たらおかしくなるから。
しかも、行かなかったら玄関まで迎えに来てくれる。
二人で話せる。
「シンチェ、おはよー!」
「バロ、おはよ^^」
「ナム先生、心配してたよ」
「知らなーい」
バロは、私の一番仲が良い友達。
1時間目が始まる少し前、放送がかかった。
『イ シンチェさん、至急保健室ナムまで来てください』
「げっ…」
1時間目は保健でナム先生の授業。
それなのに呼び出し、意味がわからない。
「いってら」
「行かなきゃダメかな」
「早く行きな」
「早く席に着いて〜」
ナム先生の代わりは、ホヤ先生。
ダンスが上手い体育の先生。
「はぁ…」
ドキドキするけど、重い体を引きずって保健室に向かう。
「失礼しまぁす」
「あっちゃんと来ましたね^^ここに座ってください」
「はい」
相変わらず笑顔の先生。
「さて、何でSHRに出ないか教えてください」
「…だから、朝も言ったじゃないですか」
「それだけじゃないでしょう」
「先生、生徒のプライベートを知りたいんですか?」
「そうじゃないですよ、このままじゃ危ないから聞いてるんです」
笑顔だけど強い口調。
「教えてもらえませんか?」
「それは…」
「相談にのりますから」
シンチェの前に麦茶を置く。
「それは…絶対言わなきゃいけないことですか」
「強制はしませんが…」
「じゃあ、私も聞きます。なんで生徒に名前で呼ばせないんですか?」
「それは…」
下を向くナム先生。
「それも答えれないのに、私に聞くんですか」
「くだらない、理由なんです」
「それでも言えないんですよね?じゃあ私も答えません」
「結婚をしようと約束した彼女が、僕のことを名前で呼んでたんです」
「結婚…それだけですか?」
「はい…^^」
寂しそうな笑顔。
こんな顔初めて見た。
「彼女にしか呼んでほしくないってことですね」
「まぁ、もう呼ばれることは無いんですけどね」
「別れたんですか?連絡つかないとか?」
「…^^さて、本題に戻りましょうか!」
いつもの笑顔になるナム先生。
「なんで出ないんですか?」
「…おかしくなりそうだから」
「おかしく?」
「しかも、起きれない…学校遠すぎます」
「それは…頑張ってくださいよ」
「無理です。まぁそんな理由ですよ」
シンチェはドアに向かう。
「メールや電話が…天国と繋がってたら良かったんですけどね」
「え?」
「呼び出してすいません、帰りのSHRは出てくださいね^^」
「…」
“天国と繋がってたら”
先生の彼女は、亡くなった。
そういうこと。
「…悔しいなぁ」
ナム先生を幸せにした彼女。
ナム先生を名前で呼んだ彼女。
ナム先生に名前で呼ばれた彼女。
ナム先生に愛されてた彼女。
ナム先生にキスされた彼女。
ナム先生にプロポーズされた彼女。