+と−
□+と- 第一話
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雲一つない、この青空。
自分の瞳が青に変わるのでは、なんていう錯覚を引き起こす。
琉祭の居る大学棟は、ルームシェアしている特別寮から少し離れている。
「銀杏と桜の木がある大学棟までは一本道だから、きっと迷わないよ」
そう言われた記憶を頼りに進んでいく。
銀杏の木は写真で見たきりで、良く分からない。母国には、花が咲かない木がほとんどだからだ。花が咲かないのは、杉の木位。
「あ、桜の木。あれが、大学棟…」
二つの棟が渡り廊下で繋がっている大学棟は、生徒数215名と少数だ。
彼が入るのは、2-S。特殊能力を持つ生徒が数多く、このクラスに入っている。
「お−、来たか。こっち来い」
ホ−ルに入ると、大きくてきらびやかなシャンデリアが目に飛び込んでくる。
その下に立っているのは、紛れもなく白雲先生だ。
「案外早くこっち来たんだな」
「琉祭に教えてもらいました」
すると、白雲は無言でアズルを見た。
「あっ、えっと、りゅうさいに、おしえてもらいました」
「そうか。…悪かったな」
「もう なれました」
アズルは、人と話すのが大嫌いだった。
何を言っても理解してもらえないからだ。だから、今日の日こそ嫌な日は無い。
自己紹介があるからだ。
きっと、何かしら計らいはあるだろうが…。
白雲の後をついていくと、琉祭のいるクラスにたどり着いた。
「俺が合図したら、入ってこい」
小さく頷くと、白塗りの重厚な扉を開けた。
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