SSS

□強制同居させる姉貴ってどうよ
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※少々グロテスクな内容となっております※





「あれ、ねーちゃん。そのダンボールどうしたの?」
「あぁ、日向。おかえり。私引っ越すから。良太のアパートに」
「…は?引っ越し?今から?」
「うん。もう迎え来てたでしょ?外に」
「あぁ、そういえば…って、急すぎないか!?」
「仕方ないでしょー。急に決まった事なんだから」




大学から帰ってきてこの急展開。
二次元か。
思考がついて行かない。


俺とねーちゃんで一緒に住んでいた我がアパート。家賃格安だが、俺のバイト代とねーちゃんの給料でようやくまかなえるくらいの値段だ。



「…じゃあ、家賃代だけはこっちにくれるんだ」
「は?何言ってんの?やるわけないじゃん」
「はぁ!?じゃあどうすんだよ!俺のバイト代だけじゃまかなえないぞ…」
「その事だけど、良太のお兄さんが半分肩代わりしてくれるって」
「へー…って、良いのかよそれ!?つかいつ決まった!?」
「全部今日だよ」



またまた急展開。
もうここ二次元だろ。
しかも良太さんの兄さんにお世話になるとか…。考えらんねぇ。
あんなヤンキーにお世話になるのかよ。



「…父さんは何て?」
「『田名さんが良いならそれで構わない』って」
「あんのバカ親父…!!」


こんなにも恨んだのは俺がグレてた時位だ。
怒りを滾らせていたら、誰かに頭をたたかれた。



「いっつ…!!誰だよ!」
「親父さんはそんな人じゃねーだろ」
「げ、京太…」
「げってなんだ。げって」
「京太さん。、早かったですね。良太のに乗って来たんですか?」
「あぁ。良太のヤツ、自分が来ればいいのにな。俺に荷物持ちやらせやがった」
「良太はそういうのを進んでやる人じゃないですからね」







…もう、どうにでもなれ。



そう思っていたら、いつの間にかねーちゃんは良太さんの家へ。京太はここに…って。


「何でお前がここにいんだよ!?」
「何でって…。ここに住むからに決まってんだろ。ここからの方が職場にちけーんだよ」
「…今日は厄日だ」



京太はここら辺じゃ少し有名な不良。
近所のおばちゃんが言うには、心優しき不良らしいけど。
県の条例ならほぼ全部無視してきたはずだ。
口は悪い。髪は金髪。ピアスにカラコン。
…と、まぁ。絵に描いたような不良なのだ。
そんな奴みたいになりたくないから、こうして真っ当な医療関係の大学に行っているのだ。
…というか、京太の仕事知らないな…。



「…取り合えず、家賃代よろしく」
「第一声がそれか」

















…というのが、俺とこいつの同居が始まった時の話。







今は同居生活にも慣れた。
京太はちゃんと家賃代も食費もくれるから、こっちとしては助かる。






「なぁ、京太」
「…んだよ」
「京太って何の仕事してんだ?」
「今更か」
「だって、オレが寝るより遅くに仕事行ってるみたいだし。何の仕事かなーって」
「あー…。水仕事」
「ホスト?」
「そんなもん。ホストより少しエゲツナイかもな」
「それって、どういう…」
「子供のお前が知ることじゃねーよ」
「うん…」
「ふっ。心配してくれてんのか?」
「な訳ねーだろ」
「だよな。お前が俺を心配する時なんて来ないよな」



京太は時々悲しそうな顔をすることがある。
今もそうだ。
そして、俺は何故か京太に惹かれている。
だから、力になりたいって思うし、悲しい顔して欲しくないって思う。
京太の無邪気な笑顔が、俺は大好きだ。



「…今日も仕事?」
「今日は休みだ。急にどうした?」
「たまには、一緒に飲みたいんだよ。お前も、作りたての飯食いたいだろ?」
「今日は随分尽くしてくれるな」
「珍しく休みだからだよ」
「…じゃあ、後で買い物行くか」
「うん」


















買い物行って、飯作って、一緒に食って。
で、一緒に飲んで。
・・・・・・初めて知った。
こいつ、酒弱いんだ。




「…京太ー?きょーぉーたー」
「んぁー?」
「大丈夫かよお前。水仕事って、酒飲まねーの?」
「飲むよ・・・。ただ、こんなに旨い酒じゃない...」
「こんなって…、ただの缶ビールだろ。お前毎日何飲んでんだよ。これより全然高くて旨いんだろ?」
「…酒の薬割」
「…え?」
「わけの分かんない薬が入ってるワイン」
「お前…」
「カプセル…」
「もういい!!しゃべんな!」
「ひなた…?」


そんなの、まるで人体実験だ。
水仕事って、そんなんじゃないだろ?…俺は何も知らないけど。



「お前、それ人間のさせる事じゃねえよ!何でそんな仕事してんだよ!」
「・・・だって、その方が手っ取り早く稼げるし…。良太には不便な思いさせたくなかった・・・」
「京太…」



何でかは分からない。
気づいたら、俺は京太を思いっきり抱きしめていた。
…酒のせい、とは言えないみたいだ。



「ひなたー・・・?」
「…なあ、京太。俺じゃ、お前の力には、なれないか…?」



自分でも、何言ってんだろって思ったよ。
だって、相手は酒に酔った心優しき不良だ。
明日には、なんにも覚えてないかもしれない。
いや、酷く酔っている様だから、十中八九すべて忘れるに決まってる。
だったら、言いたいことは今のうちに言ってしまおう。酒の力がなければ、周知が勝って言えそうにないからな。




「京太は本当に優しいから、家に帰ってきてから俺に心配かける事なんてなかった。きっと、良太さんにもつらい顔見せなかったんだろうな。
…疲れなかったか?逃げ出したくならなかったか?
良太さんの前で本当の自分曝せないなら、せめて。
俺の前では、本音を言え。
その方が、俺は嬉い。

…俺は、お前が好きだ。愛してる」



「…うん。俺も。…だから、さ」
「なんだよ」
「話、聞いて?」
「酔っ払いのか?」
「お前の話聞いてたら酔いさめた」
「あっそ。明日にはなんにも覚えてない、なんてことは無いんだよな?」
「ねーよ。当たり前だ」
「ははっ。じゃ、良いよ?話聞く」





それから、その仕事をしだしたいきさつとか、良太さんへの想いとか、俺への想いとかを話してくれた京太。
こいつ、不良なんだよな…?
って思うくらい純粋な京太がいたことに少し驚いた。



翌朝には、俺の隣には目を腫らしながら、安心しきった顔で寝ている京太がいた。



「まだ寝てろよ…?」




俺はベランダに出て、電話を掛けた。
相手は良太さん。
1コールで出てくれた良太さん。




「朝早いのにすみません、良太さん」
「ううん。そろそろかなって思ってたから、平気。…京太、仕事の事話したか?」

目ざといな、良太さん。

「…はい。最初は酒の勢いで話し出して、酔いが醒めたら泣きながら話して…」
「あはは、やっぱり。…アイツ、なんて?」
「『こんな仕事したくない』『良太に心配かけたくない』って、ずっと」
「…うん。分かってたハズなのに、罪悪感が…ね」
「良太さんは知ってたんですか?京太の仕事内容」
「…知ってたよ。仕事始めてから、数日くらいで」
「じゃあ何で、やめさせなかったんですか」
「俺もやめさせようと思ったよ!けど、アイツは…っ。『心配するな』『先輩は良い人ばっかだから』って…」
「…良太さんは人の事信用しすぎです」
「そうかもね。…今は落ち着いてる?」
「少なくとも、ここに来てからは安定してるみたいですね。可笑しい所は何も」
「…うん。やっぱり日向君の所に預けて良かった」
「それは良かったです」
「京太の事、よろしくね」
「分かってます。…あ、京太起きたみたいなんで、電話切りますね」
「うん」








やっぱり兄弟なのかな。
俺より京太を知ってる。
…少しだけ、嫉妬してる。





寝室に戻ると、眠い目をこすっている京太がいた。




「おはよう、京太。もう少し寝てても良いぞ?」
「大丈夫…」
「頭、痛くないか?」
「…痛い」
「じゃあ寝てろ」
「…んー」
「…何だよ」
「おはようのちゅー」
「お前いくつだよ」




とか言いながらしてしまうのは、俺が京太を甘やかしている証拠だよな。








これから、仕事についてはゆっくり話すとして。

今はこいつがまともに生きれるようにしてやらないと…な。









「京太」
「何?」
「好きだぞ」
「俺もだ」













_______________


こんなグロテスクな話になるとは思わなかった。
予想外の方向に話が進んだ(笑)



いかがでしたか?
裏話をすると、
・良太は、「自分が居たら、一生なにも変わ らないままだ」と思い、日向の家に京太を 預けました。お姉さんも知ってました。
・その後、ただのホストクラブで働き始めま す。




…って、ここまで読んでる人いるのかな;







閲覧、どうもありがとうございました。



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