魔法使いヒッキー

□その31
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おぉ…本屋ってこんなに本がたくさんあるのか。
カッパを連れて来たのは去年教科書を買い損ねた本屋だった。けど、やたらと人多くね?眉を寄せて、それでも今回は必ず買わなきゃならない教科書を探す。
今年はロックハートなる人物の書いた本が大量にいるらしい。全く一冊にまとめろってゆーものだ。
ぶつぶつと文句を言いながら年配魔女を避けて店の奥に入ると何やら騒がしい。
よくよく見ればそこには、キザったらしい男と苦笑いして写真を撮られていたハリーの姿だった。

「おーい、ハリー。」
「名無し!久しぶりだね!」
「本当だねー。ところで何して「初めまして素敵なお嬢さん。わざわざ私のサイン会に来てくれてありがとう。」…サイン会?」

何だって?サイン会だって?ふざけんな、ボクがいつそこらへんのリア充みたいなことをした。サイン会より声優の握手会の方が断然楽しいわ。
キザったらしい男は大股でこちらに来るとボクの手を握り鬱陶しいぐらいの笑みをした。

「君は東洋人なんだね。わざわざ私の為に来てくれてありがとう。私はなんて幸せなんだろうな。」
「東洋人は認めるが、決してお前の為じゃない。離せ、手が汚れる。頭大丈夫か。」
「あぁ、美しい上に私の心配までしてくれる…。そうだ、優しい君に私のサイン入りの本を全てあげよう。」
「ボク、ロックハートの本が欲しいだけなのに。(嫌だけど)授業でいるらしいし。」
「私の本だって?なら君もホグワーツの生徒なんだね。きっと新学期からは毎日薔薇色さ、なんせ私が授業をするからね。」

ほざけ。ウインクするな。目ぇ潰すぞ。あと手の甲にキスしやがって。さっと手を引き、近くに立っていたロンのマントでさりげなく拭いた。
そしてなんと無料でロックハートの本全てを手に入れた。どうしよう、いらねぇ。
正直本人に出会って思ったのが、絶対こいつの授業受けたくないってこと。
ロックハートはまた大股で歩いて机に戻るとサイン会をし始めた。彼から受け取った本をカッパに持ってもらい、ボクは改めてハリーたちに向き合った。ロンはボクを見て嬉しそうに笑った。

「久しぶり!」
「うん、久しぶりロン。元気だった?」
「勿論さ!にしても凄いね、あいつのファンの前であんなこと言うなんて。」

え、あの列ってファンだったんだ。笑顔で返ってくる返事にこちらも笑みをこぼした。ハーマイオニーもいたのに驚いたし、彼女がロックハートのファンなのにも驚いた。
目を覚ましてハーマイオニー、こいつはただの目立ちたがりの阿呆だ。
哀れみを込めて彼女を見ていると嫌味ったらしい言い方の声。見ればフォイフォイがそこにいて、ハリーに嫌味を言っていた。

「フォイ!久しぶりー。」
「名無し。なんでこいつらと一緒にいるんだ。」
「いや、偶然。」

あはは、と笑っているとロンやハーマイオニーもこちらに来た。そしてロンと同じ赤毛のおっさんも来て、みんな店の外に行こうと促した時、入り口からフォイと同じ髪のおっさんが入ってきた。彼の父親らしく、話し方もそっくりで笑うのを必死に堪える。
フォイフォイが訝しげにこっちを見てたので平常心を保とうと息をつくと、大きな音と同時に本が落ちてきた。
音の方には大人の取っ組み合い。その足元には沢山の本。
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