太陽色
□出逢いは突然やってくる
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担任に連れられて、教室の扉の前に立った。
私が転入するクラスは2−Cだった。
内心、クラスメートと関わるつもりはないから、どこのクラスだろうと構わないと思っていた。
「篠原。入ってこい」
担任の原田先生の合図で、教室の扉を開く。
その瞬間に、クラスの視線が一気に私に向けられたのがわかった。
私は、教壇に上がると、なれない手つきで黒板に名前を書く。
最後の一画を書き終えて、前に向き直り、自己紹介をする。
『篠原陽香です。よろしくお願いします』
簡単な自己紹介が終わると、原田先生は私に席に向かうように促した。
場所は窓際の後ろから二番目のまぁ、結構いい場所。
私は原田先生に軽く会釈をすると、スクールバッグをかけ直し、新しい自分の席へと向かった。
クラスメートからの視線を感じつつ、自分の席まで行くと、カバンを机の横にかけ、いすに座って、軽くいすを引いた。
周りの人を確認しようと、チラッと横を見ると、制服の下に黄色いパーカーを着た男子と目があった。
その子は、私の方に向き直ると、太陽みたいな明るい笑顔で、にっこりと笑いかけてくれた。
「オレは藤堂平助!よろしくな!陽香!」
第一印象は、明るくて優しいバカ。
屈託のない笑顔で、周りなど気にせず自己紹介をして、手を差し出してきた。
たぶん、握手をしようってことなのかな?
私は、差し出された手を握り返した。
『よろしくね。藤堂くん』
よろしくするつもりはこれっぽっちもないけど、とりあえず社交辞令として挨拶をした。
藤堂くんは、「おう!」と言って、眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。
元が良いみたいだから、たぶんかなりモテると思う。
互いがそれとなく手を離し、前を向く。
原田先生は、私達が話し終わるのを律儀に待っていたらしく、やっと終わったか、と言わんばかりの溜め息を一つこぼし、今日の日程について話し始めた。
原田先生が「連絡は以上だ。1時限目の準備しとけよ」という声と同時にチャイムが鳴る。
まだ教科書が揃っていないので、普通は隣の藤堂くんとかに、見せて、と頼むところなのだろうが、私はそうしなかった。
クラスメートがガタガタと動き出してから、私はイスから立ち上がり、教室を出た。
私の学校での定位置に行くために。
出逢いは突然やってくる
(ねぇ、私に居場所はできるのかな)
(あの場所以外の居場所が)