太陽色
□私の居場所
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『失礼します。山南先生、ベッド貸して下さい。』
「なら、一番奥のベッドへどうぞ」
『ありがとうございます』
私は、一番奥のベッドに行くと、内靴を脱ぎ、ベッドの上に上がり、保健室側のカーテンを閉めた。
横になって、窓の外をボーッと眺めていた。
すると、不意に山南先生が声をかけてきた。
「転入早々さぼりですか。感心しかねますね」
『必要最低限の授業にはでますよ』
「私が言いたいのは、友達を作らないのか、ということです。」
『友達なんていりませんよ。私は、いつ死ぬか分からない身です。友達を作ったって、ただ辛いだけですから』
友達がほしくない訳じゃない。
でも、もし友達を作って、スゴく仲良くなって、かけがえの存在ができたとき、私の病状が悪化したら?
私が死んでしまったら?
そう考えると、怖くて怖くてたまらない。
人と関わるのが、嫌になる。
視界が、ぼやけた。
「分かりました。」
私は、そのまま眠りについた。
○●○●○
「失礼します。山南先生、トイレの石鹸がなくなったので、替えを頂いてもよろしいでしょうか。」
「あぁ、それなら、あの棚の扉を開けていただければあるはずです。」
「はい。ありがとうございます」
私は、優等生のような凜とした声で目を覚ました。
どんな人だろうと思って、カーテンを少しだけあけて保健室を見た。
そこには、細身の目の鋭い少年が立っていた。
少年はチラッとこちらに視線を泳がせると、少し驚いた顔をした。
「篠原くんじゃないか」
『え……?なんで私の名前を知って………』
「同じクラスの山崎だ」
『あ、そうなんですか』
「それより、なぜ保健室にいるんだ?」
『私の居場所ですから』
「は…?」
山崎さんは切れ長の目をパチクリ瞬かせて、私を見た。
友達を作る気がない私の唯一の居場所。
それが保健室。
『早く行かないと、授業始まりますよ』
「君は?」
『私は、今日はずっと保健室に居る予定なので、お気になさらず』
私は、これ以上話しかけないでくれと言わんばかりに、カーテンを勢いよく閉めた。
うわぁ、私の印象最悪じゃん。
でも、これで山崎さんは話しかけてこないよね。
私は枕に顔を埋め、また眠りについた。
私の居場所
(友達なんて要らない)
(傷つくのが恐いから)