太陽色


□太陽な笑顔
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「だいぶ様になってきたよなー」



藤堂くんに素振りの隠れ稽古を受けてから早一週間。
まだ全然長くはやっていられないけど、だいぶ様になってきたようだ。



「平助くん、土方先生探してたよ!」


「げっ!マジかよ。陽香、俺ちょっと行ってくる」


『うん、いってらっしゃい。』



藤堂くんは“雪村さん”という、剣道部のマネージャーさんに呼ばれて、道場に戻っていった。


雪村さんは女の子らしくて、可愛くて。部員みんなから可愛がられている。
藤堂くんとは幼なじみらしく、たぶん、部の中で一番仲がいい。



『土方先生に呼ばれたってことは、結構時間かかるよね』



私は、芝生の上に座って、藤堂くんが戻ってくるのを待つことにした。
すると、右の方から茶色い髪をした背の高い人が歩いて来るのが見えた。



「あれ?君、最近よく平助といる子だよね」


『あ、はい』



その人は、芸能人のように整った顔立ちで、ニコニコしながら私の横に座った。



「転校生の篠原陽香ちゃん、だったよね?」


『そうです』


「平助も隅に置けないな。こんな可愛い子と仲良くなるなんてさ」


『はい?!』



格好いい人に人生で初めて可愛いって言われちゃいました。
恥ずかしいと言うか、何というか。



「でも、君には何回か会ったことあるんだけどね」


『えっ?どこでですか?』


「保健室」


『?』


「陽香ちゃんがいつも使ってるベッドの隣なんだけど、分かんない?」


『あっ!』



思い出した。


たまに女子生徒が来てキャアキャア騒いでうるさいときによく居る人だ。
そっか、どうりで女の子達が騒ぐわけだ。だって、格好いいもん。



「思い出してくれたみたいだね」


『はい。女の子達が騒いでいるのですごく印象に残ってますから』


「ははっ、やっぱりうるさいよね。」


『いや、そこまでは言ってないですけど…』


「それじゃ、僕行かなきゃ。土方先生がうるさいからね」



そう言うと、保健室の王子様は立ち上がってついた芝を払い、立ち去った。その間際に「僕の名前は総司。沖田総司。覚えといてね」そう言って道場の方に去っていった。



『沖田、総司さんか…』



なんか、風みたいな人だなぁ。



「陽香。」


『あ、藤堂くん。用事もう終わったの?』


「……ああ。」



藤堂くんは少し複雑そうに返事をした。


さっきまでの元気いっぱいの藤堂くんじゃなくて少ししょんぼりした藤堂くん。


土方先生に叱られでもしたのだろうか?



『藤堂くん、どうしたの?』


「あのさ。陽香って、総司と仲良かったのか?」


『ううん。さっき初めて話したの』


「そっか!」



藤堂くんは、先程とは打って変わってしょんぼり藤堂くんから元気な藤堂くんに戻った。


今日の藤堂くんはなんだかおかしい。



「そうだ!今度の日曜日に剣道部で花見に行くことになったんだ」


『そっか。面白そうだね』



実は私も一緒に行きたいな、なんて思ってたりする。
まあ、そんなことは無理だって分かってるんだけどね。



「陽香も一緒に行かねーか?」


『え?』


「いや、イヤなら良いんだけどさ」


『ううん!行きたい!』



私がそう答えると、藤堂くんは太陽みたいに温かい笑顔で「そっか!」と言った。


藤堂くんの笑顔は心がポカポカと温かくなる。ある意味超能力だ。



『でも、桜はもう終わってると思うんだけどな……』


「だよなー。まあ、どうせ総司あたりが無理言ったんだろうけど」



だいぶ暖かくなった風が2人の髪を揺らす。


藤堂くんは「よしっ!」と気合いを入れて、また私の素振りの指導をしてくれた。


帰り際に藤堂くんと携帯のアドレスを交換した。
その後、私は母親の運転する車に乗り、帰路についた。


私の胸は、初めてのお花見にウズウズと高揚していた。





太陽な笑顔

(あなたの笑顔は)
(全てを照らす太陽のようで)






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