偽りの姫
□月下に咲く一輪の華
1ページ/1ページ
満月の夜
満開の桜の木の下
少年(少女)が桜の木を見上げ、佇んでいた。
月明かりに照らされて、白く輝く夜桜の下。少年(少女)の長い睫毛と美しく、艶やかな長い黒髪、そして、白磁のように白い肌が月夜に輝く夜桜に負けないくらい、美しく輝いていた。
そんな浮き世離れした空間に、一人の浪士が忍び寄る。
少年(少女)は、その気配に気がついてか、ソッと小太刀に手をかける。
「ぁあぁあああぁああ!!!」
断末魔のような叫び声をあげ、浪士は少年(少女)に切りかかる。
浪士の目は、赤色に鈍く光っていた。
次の瞬間
白く輝く夜桜の下に、真っ赤な華が咲いた。
そして、その後すぐに浪士がその場に倒れ込んだ。
少年(少女)は変わらず夜桜を眺めていた。
前と一つ違うのは、少年(少女)の着物と袴が血に汚れていたということだけだった。
風が吹き、白い夜桜が舞う。
少年(少女)の一つに結わえた、長く艶やかな美しい黒髪も、その風に乗ってなびいていた。
その姿は、月夜に映える、漆黒の華のように美しかった。