偽りの姫

□月下にく一輪の華
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満月の夜


満開の桜の木の下


少年(少女)が桜の木を見上げ、佇んでいた。


月明かりに照らされて、白く輝く夜桜の下。少年(少女)の長い睫毛と美しく、艶やかな長い黒髪、そして、白磁のように白い肌が月夜に輝く夜桜に負けないくらい、美しく輝いていた。


そんな浮き世離れした空間に、一人の浪士が忍び寄る。


少年(少女)は、その気配に気がついてか、ソッと小太刀に手をかける。



「ぁあぁあああぁああ!!!」



断末魔のような叫び声をあげ、浪士は少年(少女)に切りかかる。


浪士の目は、赤色に鈍く光っていた。




次の瞬間




白く輝く夜桜の下に、真っ赤な華が咲いた。


そして、その後すぐに浪士がその場に倒れ込んだ。


少年(少女)は変わらず夜桜を眺めていた。


前と一つ違うのは、少年(少女)の着物と袴が血に汚れていたということだけだった。






風が吹き、白い夜桜が舞う。


少年(少女)の一つに結わえた、長く艶やかな美しい黒髪も、その風に乗ってなびいていた。





その姿は、月夜に映える、漆黒の華のように美しかった。




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