偽りの姫
□新選組入隊
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「おい、そこのぼうず。お前がコイツを殺ったのか?」
『はい』
少年(少女)…柊晶は淡々とした口調で答える。
『……何故、ボクに槍を向けているのですか?』
「お前は見ちゃいけねーもん見ちまった。だから殺す」
『こんな貧弱そうな男児に槍を向けなくても良いではありませんか。しかし、お手合わせしたいというのであれば、致し方ないですね』
晶は、腰に携えている脇差しに手をかける。
「なんだ?俺と殺ろうってのか?ハッ!良い度胸してんじゃねーか」
『新選組十番組組長に“良い度胸してる”と言われると、なんだか誇らしいですね』
「てめぇ…馬鹿にしてんのか?」
『いいえ?寧ろその逆ですね。誉め称えているのですよ』
「あ゛ー!イラつく!」
原田は晶に向かって、思いっきり槍を突き出す。しかし、晶はその槍を見事によけて見せた。
それどころか、その槍の上に乗っかった。
原田はその槍を動かし、晶を振り払おうとした。しかし、晶はその動きを利用し、原田の背後に回った。
原田はこれを待っていた。といわんばかりに、槍を自分の脇辺りから背後に向かって突き刺した。
しかし、ここでも晶はその槍の上に乗り、脇差しを背後の首筋にあてがえた。
『ダメですよ。原田さん。そうやって直ぐにカッとなっちゃぁ』
「クッ…」
『原田さん。一つ、提案があります』
「…なんだ」
晶は不敵な笑みを浮かべ、原田の背後から眼前まで歩み寄った。
『ボクを新選組の隊士にして下さい。そうすれば、貴方達が隠したがっている秘密も守られます。どうですか?』
「………」
『これは、ある意味取引ですよ。ボクが隊士になれば秘密は守られる。そうすれば、ボクの命は救われる』
「……なんで……」
『“なんで壬生郎と呼ばれる俺達の仲間になりたいのか”ですか?』
「…ああ」
『敢えて言うならば“反抗”ですかね』
「誰に」
『一番憎んでいる人です』
「……一応、土方さんや近藤さんや山南さんに訊かなきゃいけねーから、ついてきてくれねーかな」
『はい』
晶は原田の後をつけて、新選組屯所へ向かった。