偽りの姫

隊の危機
1ページ/2ページ



晶が新選組に入隊して数週間が経った。


他の隊士達には馴染んだのだが、やはり、沖田とは、一向に馴染んでいなかった。


寧ろ、拒まれているような、そんな状態だった。


また、晶は一応、女の子なので、風呂の時間はヒヤヒヤものだった。


胸までさらしを巻いているから、脱いでしまえば一発で女だとばれてしまう。


だから、晶は残って剣の稽古をしてから行く。と言って、皆が出たのを見計らって風呂に入るようにしていた。


もちろん、今日も例外なく、そうしていた。



『…疲れるな。皆にバレないようにコソコソ風呂に入んのも』



着物を上だけ脱いで、さらしに手をかけた瞬間、入り口のほうから声が聞こえた。



「なんで男のクセに、胸までさらし巻いているのかな」



晶が驚いて入り口の方を見ると、そこには……



『沖田…さん』



どこか勝ち誇ったように笑ってる沖田の姿があった。



「ねぇ、なんで男であるはずの君が胸にまでさらし巻いてるのかな」


『っ…それは…』


「それは?」


『………ボクが、女だから……です』


 
「へえ…。なら、なんで女が男装して、新選組に潜り込んだのかな」


『男装…ですか。そうですよね。周りから見れば、そうなりますよね』


「とりあえず、このことは近藤さんや土方さんに報告するから」


『っ待って下さい』



晶は立ち去ろうとする、沖田の着物の裾をギュッと握った。



『ボクにだって、理由がない訳じゃない。ボクに理由を話させてほしい。それでも納得が出来なかったら報告しても構わない。』


「…とりあえず、風呂入ったら?それまで待っていてあげるから。」


『はい…っ。ありがとうございます』



沖田は出て行き、入り口の柱にもたれかかった。


晶はそれを確認すると、さらしをとり、着物を全て脱ぎ、風呂場に入った。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ