偽りの姫
□脱隊の危機
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晶が新選組に入隊して数週間が経った。
他の隊士達には馴染んだのだが、やはり、沖田とは、一向に馴染んでいなかった。
寧ろ、拒まれているような、そんな状態だった。
また、晶は一応、女の子なので、風呂の時間はヒヤヒヤものだった。
胸までさらしを巻いているから、脱いでしまえば一発で女だとばれてしまう。
だから、晶は残って剣の稽古をしてから行く。と言って、皆が出たのを見計らって風呂に入るようにしていた。
もちろん、今日も例外なく、そうしていた。
『…疲れるな。皆にバレないようにコソコソ風呂に入んのも』
着物を上だけ脱いで、さらしに手をかけた瞬間、入り口のほうから声が聞こえた。
「なんで男のクセに、胸までさらし巻いているのかな」
晶が驚いて入り口の方を見ると、そこには……
『沖田…さん』
どこか勝ち誇ったように笑ってる沖田の姿があった。
「ねぇ、なんで男であるはずの君が胸にまでさらし巻いてるのかな」
『っ…それは…』
「それは?」
『………ボクが、女だから……です』
「へえ…。なら、なんで女が男装して、新選組に潜り込んだのかな」
『男装…ですか。そうですよね。周りから見れば、そうなりますよね』
「とりあえず、このことは近藤さんや土方さんに報告するから」
『っ待って下さい』
晶は立ち去ろうとする、沖田の着物の裾をギュッと握った。
『ボクにだって、理由がない訳じゃない。ボクに理由を話させてほしい。それでも納得が出来なかったら報告しても構わない。』
「…とりあえず、風呂入ったら?それまで待っていてあげるから。」
『はい…っ。ありがとうございます』
沖田は出て行き、入り口の柱にもたれかかった。
晶はそれを確認すると、さらしをとり、着物を全て脱ぎ、風呂場に入った。