偽りの姫

常茶飯事
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『沖田さん!さっさと起きろ!!』


「分かったから。毎朝毎朝布団引き剥がすの止めてくれないかな?」


『体揺すっても起きない沖田さんが悪い』


「最近、僕の扱い酷くない?」


『ご心配なさらず。至って普通ですから。ほら、早く着替えちゃって下さい。朝食食べに行きますよ』



晶が新選組に来て3ヶ月が経った。


満開だった桜は、新緑へと変わった。


変わらないのは、晶が一番組隊士兼小姓だということ。それと、新選組の普段の生活だ。



『おはようございます』
「おはよう」


「柊と総司か。おはよう」


『斉藤さん。おはようございます』


「皆の前での猫被りっぷりは凄まじいね」
『おっと肘が滑った』


「肘!?…ォウッフ」



晶の肘が沖田の溝うちにクリーンヒットした。



「あっはははは!!相変わらず仲良いな!」

「うん。そうだね」
『平助の目は節穴か?』


「反応が真逆だな」



何時もの食事時間。


平穏な時間。


新選組での生活で、最も和やかな時間。



『沖田さんと同室だなんて、良い迷惑です』



晶はご立腹の様子でご飯をかきこんでモフモフしている。



「なんでだ?」



原田が聞くと、マイペースにご飯を飲み込んでから話し始めた。



『沖田さんと同室だと、突然無茶ぶり言い出すし、先に寝ると鼻つまんで息止めてくるし。言うこと聞かないと全体重をのしかけてくるし。仕事は押しつけられるわ、隊士の剣術の稽古まで押しつけられるわ、もう散々なんですよ』


「大分装飾してない?」


『ありのままを話したまでです!いくらボクが沖田さんの小姓だからといって、こき使いすぎです』



晶は再びご立腹の様子で、おかずをかきこんで『ごちそうさま』とモフモフしたまま言って、その場を去っていった。


食事場には、幹部隊士だけが残された。



「総司。いくらなんでもこき使いすぎじゃあねぇか?」


「だって、こき使われるのが小姓でしょう?」


「まあ、そうだが」


「まあ良いじゃないか歳。柊くんだって、別に嫌々という訳じゃないんだろ?」


「そうですね。流石近藤さん。分かってますね」



沖田は満足げににっこりと笑った。



「なぁ…左之さん。俺、晶が可哀相になってきた」


「奇遇だな。平助。俺もだ。」



影で、藤堂と原田に可哀相だと思われている、晶であった。

 

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