偽りの姫

□綱道と若水
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千鶴が屯所に居ることになって、交代で見張りをすることになった。


沖田の小姓である晶は沖田と見張りをすることになっている。


勿論、晶的にも、それは良いのだが、一つ、分からないことがあった。


《綱道さん探し》


誰かを探すのも別に構わないし、隊務をこなしつつだから別に文句なんて無い。


ただ、一つ分からないこと、それは





『綱道さんって誰ですか』





綱道さんが居た頃に晶は来たのだが、会う機会なんてなかったし、綱道さん関連で幹部が集まるときは除け者状態だったから、まず分かるはずがない。





「坊さんだよ。」


『いや、それは何回も聞きましたけど!どんな顔かって聞いているんです!似顔絵とかないんですか?』


「土方さんに聞かないと分からないな」


『とりあえず、お坊さんを見かけたら、沖田さんに聞けばいいですよね』


「えー」


『……………見かけたら聞くのでちゃんと答えて下さいね?』


「はいはい」





いけ好かない態度をとる沖田に苛立ちを感じつつ、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。





『綱道さんって一体何者なんですか?千鶴ちゃんのお父さんってこと以外で』


「…………」


『綱道さんと羅刹は、何か関係があるんじゃないんですか?』


「…なんでそう思うのかな?」


『綱道さん関連の会議はボクの立ち入りは禁じられていたし、綱道さんの名前が出たときの反応がなんか…はい』


「そうだね。晶ちゃんは羅刹になれるから、話してあげる。ただ、僕が言ったってことは内緒だよ。」


『はい』


「……綱道さんはね、羅刹になる薬…変若水を幕府の命令で作っていたんだよ。新選組の隊士を実験台にして。まぁ、これは幹部だけが知る秘密だし、実験台の隊士も怪我をして再起不能な隊士だからね。」


『その綱道さんが逃げ出したから、大問題なんですね』


「そう」


『何となくは分かりました。ありがとうございました』



晶は立ち上がると、沖田の部屋から出て行った。


『(綱道さんが羅刹になる薬…変若水を作っていたということは、千鶴ちゃんの言い分を聞く限り知らないのだろう。羅刹は半端な鬼。なら、風間や不知火は何か知っているのだろうか?会いたくはないけど、一度確かめたいな。)』


 

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