偽りの姫
□新撰組
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文久四年一月
『うーん…』
「なに不細工な顔して考え込んでるの」
『投げ飛ばしますよ。沖田さん』
「投げ飛ばされる前に斬っちゃおうかな」
『冗談です。ゴメンナサイ。』
晶と沖田は、非番のため、沖田の部屋でのんびりしていた。稽古は伍長に沖田が押し付けたらしい。
晶は沖田の小姓であるため、名目上付き合わされてるという形でサボっている。
「で、なに考え込んでるの」
『いや、性別は別として、羅刹化についていつ話そうかと思いまして』
「別に話さなくても良いんじゃないかな」
『それが、そうもいかないんですよ。アレの血を何年も口にしていないので、普通の人間の血でも狂ってしまうかもしれない。寧ろ、何も見ていなくても狂ってしまう可能性があるので、そろそろ言わなければいけないかな〜って思いまして』
「晶ちゃんが狂ったら、僕が直々に斬ってあげるよ」
『お願いします』
冗談とも本気ともとれない会話をしながら、2人は、沖田が懐から出した金平糖をポリポリ食べ始めた。
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夕食の時間。
今は、土方と山南が大阪に出張中のため、夕食はその2人抜きで行われた。
『斎藤さん。なにちゃっかりボクのおかずを取ろうとしてるんですか。あげませんよ』
「む…」
「あははっ!斉藤くん、晶に一本とられたね」
「ちょと!新八っつぁん!なんでいっつも俺のばっか取るんだよ!」
『図体が無駄にデカいからだと思いますよ。平助』
「無駄ってなんだ!無駄って!」
『一言で言うと、筋肉馬鹿。ですかね。あ、失礼しました』
「プッ、くくく。アハハハハハハハハ」
「総司!笑いすぎだ!」
『あれ?沖田さん、もう良いんですか?』
「うん、あんまり腹一杯に食べると馬鹿になるしね」
「おいおい馬鹿とは聞き捨て……だが、その飯いただく!!」
「どうぞ。僕はお酒をチビチビしてればいいし」
「んじゃ俺も酒にするかな」
いつものような賑やかな夕食。
そこに突然、広間に井上が入って来た。
「ちょっといいかい、皆」
その声はいつものように穏やかな声だったが、井上の目は真剣そのものだった
和やかだった空気が一瞬で硬いものへ変わった
「大坂に居る土方さんから手紙が届いたんだが、山南さんが隊務中に重傷を負ったらしい」
『……』
皆、一斉に息を呑んだ。晶を除いて。
井上の話によると大坂のとある呉服屋に浪士たちが無理矢理押し入り、駆けつけた山南や土方たちは何とか浪士たちを退けがその時に山南が怪我をしてしまったのだ
「それで山南さんは……!?」
「相当の深手だと手紙に書いてあるけど傷は左腕とのことだ。剣を握るのは難しいが命に別状は無いらしい」
「良かった……!!」
千鶴が言った一言で、その場の空気が一層堅いものになった。
『……良くなんかありませんよ。千鶴ちゃん。寧ろ、最悪です…』
「え?」