偽りの姫

□血の
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『……っん……』



晶が目を覚ますと、そこには見慣れた木目の天井があった。



『(ボクは…風間の指を口に入れられて、あの後どうなったんだろう?)』



まだハッキリとしない頭で、ボンヤリ池田屋での出来事を考えていた。



『(そういえば沖田さん、吐血してたけど、大丈夫だったかな)』



そう思って、隣を見ると、沖田の姿はなく、変わりに綺麗に畳まれた布団があった。


不思議に思いながらまたボンヤリ天井を見上げていると、静かに部屋の襖が開いた。


冴えきっていない虚ろな瞳でそちらを見ると、千鶴が立っていた。



「柊さん…。目を覚ましたんですね」


『…千鶴…ちゃん?ボクはいったいどれくらい眠っていたの?』



千鶴は晶の隣にしゃがみこみ、晶が体を起こすのをサポートしつつ「3日間です」と答えた。



『そっか。そんなに寝てたんだ』


「はい。あのっ、私、皆さんに報告してきますね」


『うん。なんか、御免ね』


「いえ。お気になさらず」



千鶴は部屋から出て行くと、パタパタと広間の方向に走っていった。


晶は『元気だなぁ』なんて呑気な言葉をもらしていたが、心の隅で沖田のことを気にかけている様子だった。



――――――
――――
――


千鶴は直ぐに戻ってきた。


戻ってきて「広間に来いだそうです」と、土方からであろう伝言を伝えると、また広間の方へと戻っていった。


晶は袴に着替えると腰に刀を携え、広間に向かった。


晶には、幹部達が聞きたいであろう事が大方予想がついていた。



『失礼します』



晶は一礼して広間に入ると、指示されるでもなく、はじめて屯所に来たときに座らされた場所に、なんの躊躇もなく座った。


そして、『どうぞお好きなだけご質問下さい』と言わんばかりに、凜とした瞳で土方を見た。



「ハァ…。なんでこういう時だけ鋭いかなぁ。お前は」


『土方さんが聞きたいのは、“あれだけの血を目の前にして、なぜボクが血に狂わなかったか”ですよね?“前にボクがその姿を見せたときはほんの数秒しか理性を保てなかったのに”と』


「ああ」



晶は自嘲気味に笑うと、ポツリポツリと話し始めた。



『ボクの飲んだ薬は父上の独自開発したもので、西洋から渡来したものとは少し違っているんです。ボクが飲んだものはまだ試作品だったから、幹部の皆さんが知る羅刹ほど、身体能力ははね上がりません。……話を戻しましょう。薬は父上の独自開発したもの。だから成分も違えば、成分構成も違う。だから、反応する、しないも違うんです。ボクは………平助や沖田さんをやった奴らの血でないと、吸血衝動を抑えられないんです。』


 

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